投資・運用 お金の王道 

Q10 相続税の計算方法を教えて! 4ステップで把握し、身の丈の対策を=板倉京

 相続税は資産を持つ人にとっては頭の痛い税金だ。「相続が3代続くと財産がなくなる」といわれるほど日本の相続税率は高い。相続税は対策次第では税額に大きな差が生じるため、多くの人が関心を寄せるテーマでもある。相続税対策として用いられる生前贈与について、政府・与党が見直しを検討している折でもあり、改めて相続税の仕組みや計算方法をおさらいしたい。

 そもそもなぜ、相続税が課せられるのか。相続人が相続によって財産をもらう行為は「働かずして財産を手にする」こと。本人の努力や能力とは基本的に無関係であり、相続税がなければ裕福な家に生まれた子は裕福でいられ、貧富の格差は埋まらないままとなってしまう。そうした世代を超えて格差・不公平が固定化することを解消するのが、相続税の役割の一つと考えられている。

 ただ、そうした相続税の意義は理解するとしても、不必要に納めすぎることもない。気を付けたいのは、自分の財産にどのくらいの相続税がかかるかを把握しないまま「良い対策はないか」と前のめりになることだ。こんな相談を金融機関や不動産会社などにしたら最後、必要以上の節税対策を提案され、「節税のためのコストが相続税を払うより高くついてしまった」ということにもなりかねない。

 相続税対策の第一歩は現状把握である。自分にどんな財産があって、相続税がどの程度かかるのかを把握して、身の丈に合った節税対策を行うことが大切だ。相続税の計算方法について、「財産1億円、法定相続人3人(妻、子2人)」のケースで説明しよう。(1)「正味財産」の把握、(2)課税対象額の確認、(3)相続税の総額の計算、(4)各人ごとの相続税の確認──の四つのステップで考える。

「基礎控除額」の把握を

 (1)の「正味財産」とは、被相続人(亡くなった人)の現預金や不動産、株や投資信託、車、ゴルフ会員権などの資産から借入金などの負債を指し引いたものを指し、この正味財産に対して相続税がかかる。実際の相続税の申告時は、被相続人から3年以内に受けた贈与財産などを加算したり、葬儀費用などを控除したりして正味財産の総額を確定する。

 ただ、相続税は正味財産すべてにかかるわけではなく、正味財産から「基礎控除額」を差し引いた金額が課税対象の「課税遺産総額」となる。これが(2)のステップで、基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算する。今回のケースでは財産1億円から「3000万円+600万円×3人=4800万円」を差し引いた5200万円が課税遺産総額となる。正味財産が基礎控除額以下なら相続税はかからない。

 (3)の相続税の総額の計算では、(2)で確認した課税遺産総額を法定相続分に分けて計算する。今回のケースでは、5200万円を法定相続分(妻が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1)で分けることになり、妻2600万円、子1300万円ずつとなる。こ…

残り1465文字(全文2665文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事