ウクライナ侵攻で高まる需要 カナダ肥料メーカーのニュートリエン
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Nutrien 肥料の世界最大手 2021年に大きく飛躍=清水憲人/32
カナダ企業のニュートリエンは世界最大の肥料メーカーで、国内の同業企業のポタシュ・コーポレーション・オブ・サスカチュワンとアグリウムの2社が2018年1月に合併して誕生した。
カナダのサスカチュワン州に巨大な鉱山を有するポタシュは、世界最大のカリウム肥料メーカーであったが、それだけでは価格変動に対して脆弱(ぜいじゃく)だった。そこで、経営基盤を安定させるために、窒素やリン酸塩肥料に加え、小売り事業にも強みを持つアグリウムと合併した。統合は対等合併とされ、取締役会はそれぞれの会社から同人数を配し、社長兼CEO(最高経営責任者)にはアグリウムのCEOが就任した。
ニュートリエンは現在、四つの事業を手掛けている。一つ目が「アグ・ソリューションズ(小売り)」事業。米国、カナダ、オーストラリア、南米に、2000カ所を超える拠点を有し、肥料、種子、防虫製品などの販売や、農業研究者による支援サービスを提供。農業生産者向けの小売りネットワークとしては世界最大規模であり、全社売上高の約65%を同事業が稼いでいる。
残りは肥料の種類別に「ポタシュ(カリウム)」事業、「ナイトロジェン(窒素)」事業、「フォスフェイト(リン酸塩)」事業に分かれている。いずれもそれぞれの分野の業界大手であり、カリウムは世界第1位、窒素は第3位、リン酸塩は第2位の生産量を誇る。売上高に占める割合はカリウムと窒素がそれぞれ15%、リン酸塩が6%だが、利益率が小売りよりもはるかに高い。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースの全社利益に占める比率は、カリウムが38%、窒素が32%、小売りが27%、リン酸塩が8%となっている。
肥料価格上昇で業績伸長
18年の合併で誕生して以降、毎年少しずつ売上高を増やしてきたニュートリエンだが、21年12月期は肥料価格の上昇などで一気に業績を伸ばした。肥料に必要な原料を供給できる国は限られているため、供給サイドに問題が生じると、価格が上がりやすい市場なのだが、21年には複数の出来事があったことで需給が逼迫(ひっぱく)した。
まず、業界第2位の米モザイクが、長い間洪水に悩まされてきたカナダのカリウム鉱山の主要坑道を予定よりも早く閉鎖すると6月に発表。これにより、世界の生産量の約1・5%が減産となったと指摘されている。また、カリウム肥料の輸出で世界の約2割のシェアを占めるベラルーシは、民間航空機の強制着陸問題を契機にEU(欧州連合)から経済制裁を強化され、肥料の輸出に影響が出た。
中国が尿素輸出制限
一方、…
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週刊エコノミスト
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