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東京港から広がるビジネス。持続可能な未来のための進化とは

 トラックドライバーの働き方改革により、輸送力不足が懸念される「物流の2024年問題」。経産省の取りまとめでは何も対策を講じなければ、2030年には輸送能力が34%不足するとの指摘もあり対策が求められている。

とくに東京港は、全国の外貿コンテナ貨物量の約4分の1を取扱っており、日本各地から多くのトラックが貨物の引き取り・引渡しにやってくる。今後も東京港において変わらぬコンテナ貨物量を処理するためには、トラックの待ち時間の短縮や遠距離地域との輸送手段の確保などが求められる。東京港を管理する東京都は、この問題の解決へ向け、“物流の未来”を見据えた物流効率化の取り組みを推し進めている。

持続可能な物流に向けた東京港の取り組み

 東京港において効率化のカギとなるのが“車両が集中する時間帯”の存在だ。都はコンテナターミナルのゲート前に並ぶ車両の混雑解消に向け、港湾関係者と連携しながら、ストックヤードの設置や早朝ゲートオープン、国が開発した新・港湾情報システム「CONPAS」を活用したコンテナ搬出入の予約制事業など様々な施策を行ってきた。効果として、ゲート前での待機列は7割ほど縮減したものの、輸入の場合は荷主に朝一で納品指定される商習慣があることから、その納品前日の午後にトラックがコンテナターミナルに集中してしまう傾向は依然として変わらない。

 そこで都は、混雑する午後や夕方のトラック来場時間の分散化に向けた新たな取り組みとして、午前中などの比較的空いている時間にコンテナ搬出入を行う「オフピーク搬出入」を推進する。令和6年9月から都が選定した荷主・物流事業者による「東京港オフピーク搬出入モデル事業」をスタートさせた。

 予約制事業においても午前中の予約が埋まりにくいという課題があるが、オフピーク搬出入への取り組みは予約を併用することで一層待ち時間の短縮が図られるうえ、運送の生産性向上など運送事業者が抱える課題解決にもつながり、相乗効果が期待できる。朝一納品などの配送サイクルの変更は、運送事業者だけでは解決しないため、荷主企業や物流事業者など物流に関わる各関係者が協力することが重要である。

 また、トラック輸送を船舶輸送や鉄道輸送に転換する「モーダルシフト」も重要な施策である。東京港から遠距離にある地域においてドライバーの確保が困難になる中、船舶や鉄道による輸送は少ない労働力で一度に大量の貨物を運ぶことを可能にし、環境負荷軽減にもつながる。都は「モーダルシフト」を行う民間事業者を支援しており、今年度からは「東京港物流効率化等事業補助金」の支援制度を拡充している。

企業の経営力強化にもつながる“物流の未来”

 荷主企業や物流事業者が「オフピーク搬出入」や「モーダルシフト」への意識を高めることは結果的に、輸送力不足によるコスト上昇への対策や貨物輸送の定時性向上など、自社の生産性向上へつながることが期待できる。さらに環境負荷軽減など、ESG経営の推進にも有効だ。

 都は、今後も東京港がサプライチェーンの重要な一旦を担う港として、トラックドライバーの待ち時間を改善する港の混雑対策を加速させるとともに、荷主企業等が取り組む「オフピーク搬出入」や「モーダルシフト」を後押しする。

 物流の2024年問題を契機に、これまで物流事業者が一手に担ってきた物流を、荷主企業の経営者らが「自分事」として捉え、物流事業者と連携して慣習や物流サイクルを変える視点に立つことは、企業自身にとっても持続可能なビジネスを実現し次のステージに向けて飛躍する大きな一歩につながるだろう。

東京港オフピーク搬出入モデル事業キックオフ会にて
東京港オフピーク搬出入モデル事業キックオフ会にて

問い合わせ先:東京都港湾局港湾経営部振興課 (外部サイトへ移行します)

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