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迫る「物流の2024年問題」 専門家とともに子ども目線で考える対策

 

 2024年4月に始まるトラックドライバーの働き方改革により、輸送力が今年中に14%、2030年には34%不足することが懸念されている。この「物流の2024年問題」に対してどんな取り組みをすべきか。専門家とともに考えてみた。

問題を解決するための本質はドライバー確保ではない。 物流とは、あらゆる物の流れのことだ。工業製品を作るために原材料を輸入することに始まり、生産された製品をトラックに積み込む荷役、倉庫まで運ぶ輸送、そして倉庫内での流通加工、保管といった一連の流れが物流に含まれる。店舗などへの輸送や海外への輸出はもとより、物流をスムーズにするための情報管理も、物流の重要な機能の一つだ。

 このような物流やロジスティクスの評価や分析に関する研究を行っているのが、東京海洋大学学術研究院 流通情報工学部門の黒川久幸教授だ。ロジスティクスとは、物流に加えて、生産や販売、商流(物の取り引き)を含む活動を計画・実行・統制することをいう。東京海洋大学は1978年に日本で初めて物流を専門的に学べる運送工学科を設立。2003年には海洋工学部 流通情報工学科となり、工学系・情報系・社会科学系を三本柱として、文系と理系を融合させた教育体制を作り上げてきた。

 黒川教授は、2024年問題解決の難しさについて、こう話す。「全日本トラック協会の調査によると、時間外労働が年960時間を超えるドライバーがいる事業者は約3割。また、ドライバーの年間拘束時間は原則3300時間とされていますが、それ以上と回答した事業者は2割を超えていることが、厚生労働省の調査でわかっています。4月に労働時間規制が始まった後もトラックの輸送能力を維持するには、ドライバーを増やすしかありません。しかし、ドライバーの年間所得は労働時間が全産業に比べて約2割長いにもかかわらず、大型トラックで463万円、中古型トラックで431万円と、全産業平均の489万円より約1割も低い。事実、ドライバーの数は横ばいで推移していますし、50歳以上のドライバーが約半数と、高齢化も進んでいます。すぐにドライバーを増やすのは容易ではありません」

 また、過疎地域では貨物量の減少からトラック運送業の経営が成り立たなくなってきている。さらには、2050年のカーボンニュートラルの実現のために、トラックの輸送だけではなく、鉄道や船舶を使った輸送についても考えなければいけなくなっていることも、2024年問題解決の難しさに拍車をかけている。

物流の改善を目指す各社の取り組み 輸送力低下が切迫するなか、「物流業界や荷主企業もただ手をこまぬいているわけではない」と、黒川教授は話す。

「例えば、物流共同化という方法があります。アステラス製薬、武田薬品工業、武田テバファーマ、武田テバ薬品の4社は北海道共同物流センターを開設し、医療用医薬品を共同輸送することによって、荷役コスト62%、保管や荷捌きのコストを36%、配送コストを37%削減しました。これは、医薬品の安定供給という共通の目的があったために実現したものですが、物流共同化は異業種間でも成立します。重い物と軽い物を組み合わせたり、コンテナ内のスペースを無駄なく使える物を組み合わせたりすることで、より効率のよい輸送計画を立てることが可能です」

 ほかにも、商品パッケージをより輸送しやすい形状に変える「DFL(デザイン・フォー・ロジスティクス)」、荷待ちが発生しないように生産の予定が狂ったら定番品の随時出荷に切り替えるなど、さまざまな手法で物流の効率化は進められている。

 こうした物流の効率アイディアを、黒川教授は「月刊Newsがわかる特別編 物流がわかる」で子どもにもわかりやすく解説している。また、物流2024年問題の解決に向けて、各家庭でできることを考えるコーナーもある。同誌では、美術品の物流、南極に観測隊や物資を運ぶ砕氷艦「しらせ」、話題の巨大物流センターからのレポート記事など、物流の魅力をさまざまな方向から紹介。大人から子どもまで、物流の世界に親しめる1冊となっている。※写真は東京国際コンテナターミナル=東京都品川区で2023年10月16日撮影

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