《地銀&メガ》プライム上場地銀にのしかかる気候変動対策という“重荷”=野崎浩成
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気候変動対策
金融機関も気候変動と無縁ではいられないが、多様化するリスクを評価することは簡単ではない。
プライム上場地銀に新たな開示の負担=野崎浩成
新型コロナウイルス禍2年目となった2022年3月期の地銀業績からは危機は感じないものの、内在するリスクは透けて見える。
第一に有価証券損失だ。米欧の金利上昇やウクライナ情勢の影響であることは確かだが、問題は有価証券への依存である。日本の法人金融の構造変化は鮮明で、一般企業から金融ステークホルダー(利害関係者)への分配の主役が、銀行から株主へ交代して久しい。多くの地銀が粗利益の8割超を貸出金利息や有価証券の利息配当金などから得る資金利益に依存しており、有価証券運用への傾斜を確認させる22年3月期決算は本業の持続可能性の危うさをあぶり出す。
第二に、低水準の与信コスト(不良債権関連損失)による利益底上げだ。東京商工リサーチによれば、21年の倒産件数は1966年以来、55年ぶりの低水準に抑えられた。コロナ禍における実質無利子・無担保の通称「ゼロゼロ融資」に象徴される政策金融の効果だが、水面下に潜む信用リスクが今後浮上する懸念がある。
第三に、経費水準の高止まりがある。経費を業務粗利益で割ったOHR(粗利経費率)は一部の銀行で9割超が続くなど、本業での赤字が目前となっている。今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)化、マネーロンダリング対策、サイバーセキュリティーなどコスト増は避けられず、そして、これに今年4月4日からの東証再編に伴うガバナンス(企業統治)の新たなコストがのしかかる。以下ではこの点について検討したい。
日銀オペ対象は28行どまり
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表では、東証再編後における地銀の上場区分と、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の賛同状況を示している。TCFDは気候変動に対する企業の取り組みや情報(非財務情報)の開示を求める枠組みで、ガバナンス▽戦略▽リスク管理▽指標と目標──の4項目について具体的開示項目を示している。
TCFDに準拠した情報開示が求められるプライム市場とは異なり、スタンダード市場に義務付けはない。もちろん、地銀があえてスタンダード市場を選択する理由はこればかりではないが、スタンダード区分の地銀でTCFD賛同を行っているのは富山、大東両銀行だけなことも事実である。
TCFDが求める開示…
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週刊エコノミスト
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