維新が参院選で躍進? 岸田政権の批判票はどこへ=中田卓二
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参院選で躍進目指す維新 政権批判の受け皿になるか=中田卓二
政権交代に直結しない参院選は「有権者が与党におきゅうを据えやすい」といわれてきた。しかし、それも旧民主党政権時代の2010年が最後。ここ3回は野党が存在感を示せず、今回も公示を前に対決ムードは高まっていない。政権批判票はどこに向かうのか。
5月9日の記者会見で、自民党の茂木敏充幹事長は多分に挑発的だった。「昨年の衆院選では日本維新の会の圧倒的な勢いが見られたが、街頭に立ってみて、そういったものは感じられなかった」。記者の質問に答えたのではなく、自ら切り出したところに茂木氏の意図がうかがえる。
その前日、茂木氏は大阪市内での街頭演説で、ウクライナ情勢に絡めて「維新の創設者がロシア寄りの発言を繰り返している。それに対して維新の国会議員は何も言えない。身内に甘い政党だ」と批判を展開した。
21年の衆院選で、自民党は大阪府内の小選挙区で維新に歯が立たなかった。幹事長が「敵地」の街頭で訴えただけで風向きが変わるとは思えない。むしろ、茂木氏は全国の有権者を意識していたのではないか。地元大阪から外へと勢力拡大を目指す維新へのけん制だ。
野党色強める戦略
維新も黙っていない。創設者に当たる橋下徹元大阪市長は「僕は身内ではない。考え方は異なる」と自身のツイッターで反論。松井一郎代表は「橋下さんは民間人。自民党の幹事長が民間人の言論を弾圧するの? 幹事長としては薄っぺらいな」とこき下ろした。
安倍、菅両政権と維新は良好な関係を築いてきた。カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致や憲法改正などでギブ・アンド・テークが成り立ったからだ。ほかの野党と一線を画し、政権に是々非々の立場をとった維新は当時、「ゆ党」とやゆされることが少なくなかった。
しかし、衆院選で公示前の11議席から41議席に躍進したのを機に、維新のスタンスは変化している。選挙後、同じく議席を増やした国民民主党と国会で連携する方針を打ち出したものの、同党が今国会で与党寄りに急旋回すると、維新は「与党になるなら連携はできない。自民党をぴりっとさせるにはまともな野党が必要」(松井氏)とあっさり突き放した。
野党第1党の立憲民主党は、共産党との共闘が不調に終わった衆院選のダメージを引きずっている。維新にしてみれば今がチャンス。野党色を強めた方が参院選に有利と計算したのだろう。比例代表に複数のタレントを擁立するのも、全国で票を掘り起こすための戦術だ。
では、維新の「実力」はいかほどか? 最近の国政選挙の比例代表を材料に分析を試みた(カッコ内は得票率)。
17年衆院選は旧立憲が1108万票(19・88%)、旧希望の党が967万票(17・36%)、維新が338万票(6・07%)。21年衆院選は立憲が1149万票(20%)、維新が805万票(14・01%)、国民民主が259万票…
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週刊エコノミスト
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