国際・政治 ワシントンDC

DC市民が選択を迫られる新チップ制度の行方 吉村亮太

クレジットカードの伝票に並ぶ高率のチップ推奨額 筆者撮影
クレジットカードの伝票に並ぶ高率のチップ推奨額 筆者撮影

 米国ではチップは避けて通れない。心が狭いといわれるかもしれないが、必要以上に渡すのはもったいない。逆に少な過ぎてケチと思われるのは避けたい。

インフレの余波

 ポストコロナのインフレ局面にあって、税前額の15%といわれてきたチップの相場が、最近は20%超も当たり前という風潮があり、米国人でさえいくらが適切なのか悩んでいるようだ。単価がかなりの勢いで値上がりしているのに、率まで引き上げることはないだろうと考える自分は野暮(やぼ)なのか。

 ちなみに米国の都市部で定着しつつある携帯電話の配車アプリでも、利用者(乗客)はチップを払う。降車後に利用者が運転手を評価するのは当然、運転手側も乗客を評価する。評価基準は人にもよるだろうが、車内のマナーに加えてチップの多寡も評価の対象になると考えるのが自然だろう。

 配車アプリを開くと、客としての自分の評価がいや応なしに目に飛び込む。それに一喜一憂するのは自分だけではないはずだ。たかがチップ、されどチップなのだ。

 中間選挙が目前だが、レストランのチップをめぐっては、ワシントンDC市民は選挙と同時に外食業界の給与制度に関する住民投票も行うことになっている。

 ワシントンでは多くの州と同様、チップをもらう立場の人(ウエーターやバーテンダーなど)には法律で定められた最低賃金(ワシントンでは時給約2300円)を適用せず、雇用者ははるかに低い時給(約770円)で雇うことも可能だ。その代わり、チップが分配される。合計が最低賃金に満たなければ差額は店側が補塡(ほてん)する。

 新しいルールが実施されればチップの多寡にかかわらず、最低賃金以上の一定額が支払われることになり、収入が安定するメリットを推進派は強調する。店が差額を補塡できず、トラブルに発展したケースを時折耳…

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週刊エコノミスト

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