経済・企業

引く手あまたの監査法人に慢心 監査先への提出書類に「誤表記」 伊藤歩

 企業の決算書類の正確さを保証する会計士と税務のプロの税理士──。資本主義や国民の納税義務を支えるインフラが大きな曲がり角に立たされている。

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 日本公認会計士協会(協会)は昨年12月26日、「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」と題した会長声明を出した。同7月、4大監査法人の一角・有限責任監査法人トーマツが、監査先向けに作成・提出している書類に、公認会計士登録をしていない職員を公認会計士として記載していた事実を公表していた。

 有価証券報告書(有報)のコーポレートガバナンスに関するページには、外部監査を実施した監査法人が、監査業務の補助要員として、公認会計士資格を持つ職員、公認会計士試験に合格済みの職員、それ以外の職員をそれぞれ何人投入したかを記載する箇所がある。

 トーマツが監査先の上場会社に提出していた監査補助者の人数構成を記載した書類に誤記があり、監査先がその書類をもとに有報の該当箇所を記載したため、監査先は有報の訂正報告書提出を余儀なくされたのだ。同9月には、同じく4大監査法人の一角であるEY新日本有限責任監査法人も、トーマツと同様の誤表記があったことを公表した。

 これを受け、協会は上場会社の監査を担当する全135の監査法人及び会計事務所に対し、同様の事態が起きていないか自己点検するよう要請。各事務所から報告書を受け取った協会が、調査結果の概要、分析結果、今後の協会としての対応をとりまとめ、会長声明として発信したというわけだ。

 結果は、135の事務所中、監査先への提出書類に誤表記があった事務所は全部で18。このうち4事務所では誤表記があった職員本人が、公認会計士登録未了の自覚があった。このほか、2事務所で公認会計士登録未了者が名刺などで公認会計士と名乗っていた事案が検出されている。

トーマツが昨夏に公表

  公認会計士資格は国家資格の中でも、その資格を持つ者でなければ携わることを禁じられている、有資格者が業務を独占的に行える「業務独占資格」である。公認会計士試験に合格し、監査法人などで2年以上の実務経験を積み、なおかつ実務補習を受け、協会が実施する修了考査という試験に合格して初めて「公認会計士となる資格」を手にする。

 さらに、公認会計士を名乗るためには、協会に対し公認会計士登録の手続きをとらねばならず、この登録は、…

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