国際・政治 ワシントンDC

トランプ派にハイジャックされた星条旗 溝口健一郎

半旗で掲げられた星条旗 Bloomberg
半旗で掲げられた星条旗 Bloomberg

 ワシントンDCを歩いていて、よく目につくものの一つが星条旗、米国の国旗である。ホワイトハウスや連邦議会議事堂をはじめとして、各省庁や裁判所など公共施設が多いためだ。国旗が半旗になることも少なくなく、それによって、その存在に気付かされもする。戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)や真珠湾攻撃追悼の日は毎年半旗が掲げられるが、功績ある政治家が亡くなった時や銃乱射事件で多数の人が犠牲になった際にも、大統領の指示で半旗が掲げられる。

 星条旗は恐らく世界でも類のない“進化する国旗”だ。星条旗の星の数は米国の州の数を表している。1776年に英国から独立した際には州の数は13で、星の数も同数だった。州の数が増えるたびに星の数も増え、1959年にハワイが50番目の州となったのを受けたデザインが現在のものになっている。

強さと自由の象徴

 星条旗は米国の強さと自由の象徴であり、米国民を一つにまとめる力を持つ。硫黄島で星条旗を立てようとする兵士たちの写真、アポロ11号の月着陸時に月面に立てられた星条旗など、世界に米国の存在感を強烈に感じさせてきた。

 しかし、「トランプ時代」以降、星条旗への受け止めは変容してきている。「MAGA」(メーク・アメリカ・グレート・アゲイン)を掲げるトランプ支持のキャンペーンは星条旗を多用している。トランプ大統領はスピーチの際にステージ上で星条旗を抱きしめて旗にキスしたこともあった。

 筆者の自宅近くにある米軍病院に、新型コロナウイルスの感染でトランプ大統領が入院した際には多くの支援者が病院前に詰めかけて星条旗を振っていた。2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件で議会に押し寄せた暴徒たちが無数の星条旗を掲げ、顔を星条旗カラーでペイントした襲撃者がいたことをご記憶の人も多いだ…

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週刊エコノミスト

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