経済・企業

日銀のYCCサプライズ修正は妥当なのか 稲留克俊

左から異次元緩和を引き継いだ植田和男総裁、サプライズ修正を行った黒田東彦前総裁
左から異次元緩和を引き継いだ植田和男総裁、サプライズ修正を行った黒田東彦前総裁

 10年に及ぶ「異次元緩和」から日銀はいかに政策修正に動くのか。3度の修正局面を検証し、展望する。

YCCの修正は2018年夏から3回あった

 昨年12月20日に日本銀行がイールドカーブ・コントロール政策(YCC、長短金利操作)をサプライズ的に修正してから、金融市場では更なる修正や撤廃の思惑がくすぶり続けている。本稿では、過去3回あったYCC修正時を振り返りながら、今後もサプライズが不可避なのかを検討する。

副作用を生むYCC

 YCCの修正・撤廃の決定がある程度サプライズ的にならざるを得ない理由は次の通りだ。

 まず、通常の利上げをイメージしたのが図1である。事前に観測報道や要人発言などを通じた将来の政策修正の示唆(本稿ではこれを「地ならし」と定義)があると、市場参加者は政策修正後の保有債券の価格下落(金利上昇)を警戒して、市場で債券を売却し始める。政策決定当日に向けて売却圧力は徐々に拡大し、実際にそれが決まる時には、すでに政策修正後の妥当な利回り水準に到達。決定当日に大きな混乱は生じない。一般に「織り込み」と評されるケースだ。

 一方、YCCのケースは異なる(図2)。地ならしを受けて市場参加者…

残り2975文字(全文3475文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事