経済・企業

下期30社アンケ 日米経済は堅調 株価は史上最高値の更新も(編集部)

 日米株式が堅調に推移する中、2023年下期の株式相場の見通しについて、強気な見方が増えている。編集部は主要金融・調査機関30社を対象に、年後半の日経平均株価、米ダウ工業株30種平均株価についてアンケートを実施した。それによると、日経平均株価の上限予想の平均は3万5820円。そのうち2社はバブル時の最高値(1989年12月29日の3万8915円)を上回るとの予想だ。米国株も上限予想の平均は3万6953ドルで、22年年初に付けた史上最高値(3万6799ドル)を更新するとの見方が支配的だ。

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 回答した30社中、唯一、日経平均4万円台乗せを予想したSMBC日興証券の安田光チーフ株式ストラテジストは「賃金上昇の確認も進み、インフレ基調への転換期待から海外投資家の関心が一層期待できるだろう」と理由を説明する。

 同じく「1989年のバブル超え」を予想するのは三井住友DSアセットマネジメントの吉川雅幸チーフマクロストラテジストだ。上限は3万9000円とみており、①(金融緩和に積極的な)リフレ(政策)を受けて名目成長率のトレンドが2%程度に回復する、②米中対立を受け、(地政学リスクの観点から)日本株へ資金流入がある──の2点を根拠とする。

「構造変化」に海外注視

 アンケートの回答は7月21日に締め切った。7月26日には、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げを決定。22年から続いてきた利上げが「打ち止め」になり、その先の利下げのシナリオが見えてくれば、株価に好影響をもたらすとの見方も相次ぐ。吉川氏は「欧米の金融引き締めの着地点が見え、景気循環が停滞から脱し始めることで株価上昇に向かう」と予想する。第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストも「利上げ停止となれば日本株にも追い風になる」とみている。

 日本株は米国株の動きに左右される傾向が強いが、日本企業の経営体質改善といった「自助努力」への期待も、強気予想につながっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の中沢翔ストラテジストは「日本企業は株主を軽視し事業再編が遅い、という社会通念の変化を含めた『構造変化への期待』が日本株のドライバー(推進力)になる」と指摘する。

 野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストも「企業の利益率改善が目立っている。原材料価格が低下する一方で、販売価格引き上げの成功事例が増えている。健全な値上げカルチャーが根付けば、長期目標として欧州企業並みのROE(株主資本利益率)が達成され、株価も現状比4割アップが期待できる」と説明、SMBC日興証券の安田氏も「資本効率改善、インバウンド、対日直接投資拡大、取締役会の多様性向上など、長期的な変化への期待も株価の押し上げ材料になる」とみる。

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 下期の注目セクターについては、半導体関係や銀行、自動車関連株に集中した。インバウンド関連のほか、PBR(株価純資産倍率)の「1倍割れ企業」にも注目が集まった。個別銘柄では、半導体関連として4社が東京エレクトロン(8035)を挙げ、アドバンテスト(6857)やローム(6963)なども注目された。

 銀行関連では4社が三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)を挙げた。自動車関連では、トヨタ自動車(7203)や三菱自動車(7211)。インバウンド関連では、オリエンタルランド(4661)、三越伊勢丹ホールディングス(3099)、JR東海(9022)、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)、マツキヨココカラ&カンパニー(3088)などがあった。

 auカブコム証券の河合達憲チーフストラテジストは、日本株に着目する米著名投資家のウォーレン・バフェット氏による「バフェット効果」や、防衛や資源エネルギー、IT技術などの先端技術が銘柄選びのポイントになるとしている。

 好調な米国経済を巡っては景気失速が懸念されているが、7月27日発表された4~6月期の米国実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は市場予想を大きく上回ったこともあり、景気を維持したまま物価上昇(インフレ)を沈静化させる「軟着陸」への期待が高まる。アンケートにも前向きな傾向が表れた。

米は景気後退回避?

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「ソフトランディングの可能性がみえてきた。景気回復の持続を織り込む形で米国株は当面、底堅く推移する可能性がある。追加引き締めの可能性や、景気腰折れ懸念の台頭で一時的に弱含む局面もあるが、それでも年末にかけては過去最高値をうかがう展開になるだろう」とみる。野村アセットマネジメントの石黒英之シニア・ストラテジストも「良好な雇用環境を背景に、米景気のリセッション(景気後退)シナリオは大きく和らぐ。ダウは史上最高値をトライする展開」としている。

 一方、日米株とも慎重な見方もある。日本株の下限として最も低い「2万7000円」を想定するJA共済総合研究所の木下茂主席研究員は「日本株については直近の水準では割安感はないとみている。米国株は今後下落する可能性が高いとみており、これを前提に日本株も調整を余儀なくされる」とみている。

(中西拓司/金山隆一・編集部)


週刊エコノミスト2023年8月15・22日合併号掲載

日米相場総予測2023 日経平均は3万6000円目指す 「軟着陸」で米株は3万7000ドル=中西拓司/金山隆一

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