マーケット・金融

インタビュー「アプリ型金融が問う既存銀行の存在価値」瀧俊雄マネーフォワードフィンテック研究所長

 家電量販店や百貨店、公共交通機関が銀行機能をアプリに取り入れる中、従来の金融機関はどう対峙すべきか。専門家に聞いた。(聞き手=金山隆一・編集部)

>>特集「埋込型金融の衝撃」はこちら

 日常生活の多くの買い物がデジタル化されるトレンドの中で、銀行の店舗やATM(現金自動受払機)はこれからどんどん削減されていく。この先、現金の利用が増えることはなく、銀行サービスに触れる場はデジタルに寄っていく。そもそも銀行自らが経済取引を生む導線がない限り、金融機能は必ずデジタル化される商行為の中にのみ込まれる方向に引力は働く。

 例えばアマゾンで買い物する時にいま銀行振り込みを使う人はほとんどいない。ネット通販の買い物を早く終わらせたいだけなのだから、サイトの中でワンクリックで早くショッピングをしたいと思っているのが私たちだ。

 とくに個人の嗜好(しこう)が多様化し、ニッチなプロダクツが好まれる現代では、個々の生活スタイルに合った銀行口座を開設できれば、金融サービスを提供する側は生活基盤の一部を押さえることができる。

 全国で一律にトレンドを作って、同じ仕組みを当てはめていくことが難しいいま、何度もリピーターとして使っているところに、銀行口座がひも付いている、という世界観がエンベデッド・ファイナンス(組み込み型金融)だ。

消えた日本モデル

 かつて日本には「60歳になったら引退して、トヨタのクラウンの次にこの車」といったモデルが存在しえたが、日本人の消費動態はもうそういう時代ではなくなった。転職も頻繁にするし、移住も昔に比べフランクに決断するし、リモートワークも可能。移住が一般的な社会でそもそも地銀は機能するのか。

 移住や2拠点生活をしている人にとっては、メガバンクやネット系銀行が選択肢に挙がりやすいはずだ。

 銀行の最大の強みはこれまでスイッチングコスト(銀行口座を移し替える手間)にあった。「金利がちょっと高いから新しい銀行に全資産を移し替える」とはならなかった。しかしいまは本人確認の手間が以前より簡単になった。何をもってその銀行と付き合うのか、その軸はずれ、多様になっている。

 地元のショッピング…

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