法務・税務

これで分かる!消費税 基本の「キ」(編集部/監修:高山弥生)

 複雑な消費税の仕組みを分かりやすく解説する。

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 消費税の負担者は消費者とされているが、消費者が商品やサービスを購入するたびに消費税を税務署に納税するのは困難だ。そこで、消費者に代わって事業者が納税義務者となり、事業者は商品やサービス価格に消費税を上乗せしたうえで、まとめて申告・納税する方式を取っている。所得税や法人税のように納税者が直接納める「直接税」と異なり、税の負担者が間接的に納税するため「間接税」と呼ばれている。

 直接税に偏った財源の是正のため、1989年4月に導入された消費税。当初3%だった消費税率はその後、増え続ける社会保障費の財源確保を名目に、97年4月に5%へ、2014年4月に8%へ引き上げられ、19年10月にはそれまでの8%から10%へ標準税率が引き上げられた。また、外食や酒類を除く食品、配達される新聞購読料には8%の軽減税率が初めて導入された。

 消費税収も年々増加しており、財務省によれば21年度の消費税収は21兆8800億円で、所得税、法人税を含めた国の基幹3税の中で最も多い。消費税は国税として事業者が税務署に申告・納税するが、すべてが国に入るわけではない。消費税率10%のうち国税分は7.8%で、残る2.2%は地方消費税として都道府県の財源になる。軽減税率8%も国税分は6.24%、地方消費税分は1.76%で配分されている。

 消費税はすべての取引に課されるわけではない。消費税法では課税対象となる取引を、①国内で行う取引、②事業者が事業として行う取引、③対価を得て行う取引、④資産の譲渡等(資産の譲渡、貸し付け、役務の提供)──という四つの条件をすべて満たす取引としている。そのため、資産の譲渡等に当たらない給与・賃金や寄付金・補助金・助成金、保険金の受け取り、株式の配当金などは、消費税の「不課税取引」となる。

 また、この四つの条件を満たしていても、課税対象としてなじまない取引や社会政策的配慮から、消費税を課税しない「非課税取引」が定められており、住宅の家賃や債券、株式など有価証券の譲渡、利子、保険料、郵便切手・印紙・証紙、学校の入学金、出産費用や介護保険法に基づく施設サービス料などが該当する。また、外国で消費される輸出取引は消費税が免税されている(図1)。

肝の「仕入れ税額控除」

 ところで、商品は生産者から卸売業者、小売業者などで売買を繰り返されて消費者の手に渡るため、この取引ごとに消費税が積み上がると、最終的に消費者が負担する消費税額よりも事業者が納税する消費税額の方が多くなってしまう。それを避けるため、受け取っ…

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週刊エコノミスト

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