法務・税務

ゼロから分かる相続登記義務化の基礎知識 編集部/監修・松本万紀

 いざという時に知っておかないと困る不動産登記と相続登記義務化について、分かりやすく解説した。(編集部/監修=松本万紀〈まつもと・まき〉拓実リーガル司法書士法人代表社員、司法書士)

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 Q1 そもそも不動産登記って何?

 A 不動産登記とは、土地や建物について、その所在地や面積といった現況に関する情報とともに、所有者の氏名や住所などの権利関係を公の帳簿(登記簿)に記録することを指す。不動産登記簿は各地の法務局で所定の手数料を払えば、誰もが閲覧できるようになっている。不動産の所有者は登記をすることで、第三者に対して自らの権利を主張することができる。

 もし、不動産登記制度がなければ、誰もが対象となる土地や建物の所有権を主張してしまい、誰が本当の所有者なのかが分からなくなり、安心して不動産を取引することができなくなる。不動産の所有権や抵当権などの権利を移転・設定する際は、原則として登記権利者(登記によって利益を得る人)と登記義務者(登記によって不利益を受ける人)が共同で登記申請する。

 登記簿謄本は登記情報を紙で管理したもの、登記事項証明書はデータ化された登記情報を紙に印刷したもので、どちらも証明する内容は同じ。登記事項証明書は「表題部」と「権利部」に大別され、表題部の登記を「表示登記」、権利部の登記を「権利登記」と呼ぶ。表題部には土地、建物の所在地や面積、地目や構造などが、権利部には「甲区」に所有権に関する事項、「乙区」に抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記載されている。

 不動産登記は本人でも可能だが、表題部の登記は土地家屋調査士、権利部の登記は司法書士が国家資格として業務を担う。登記にはこのほか、商業・法人登記や債権譲渡登記、成年後見登記、船舶登記などさまざまな種類がある。

 Q2 相続登記の義務化って何?

 A 相続人が不動産を相続した際に、不動産の所有者の名義を相続人に変更する「相続登記」の申請を義務化すること。義務化は改正不動産登記法が施行された2024年4月1日から。相続が発生したことを知り、なおかつ対象となる不動産の所有権を取得したことを知った相続人は、その日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。義務化は権利部の甲区に表示される所有権に限られ、乙区の抵当権などは対象外。

 不動産登記法ではそれまで、登記が義務付けられていたのは表示登記のみで、権利登記についての義務はなかった。表題部については記録されている所在地や家屋番号、地目、地積、構造、床面積などに変更が生じた場合や新たに建物を新築した場合、1カ月以内に登記を申請しなければならず、違反すれば10万円以下の過料が科されることになっている。

 しかし、不動産登記法の改正によって、正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されることになった。遺産分割によって不動産を引き継いだ相続人も、分割した日から3年以内の申請が求められる。注意したいのは、義務化以前に不動産を相続しながら相続登記をしていない相続人も相続登記が義務づけられていることだ。ただし、…

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