教養・歴史目利きの本棚

「マネーはテクノロジー」の時代にひもとく歴史=増山修

 仮想通貨取引が話題の昨今、人類にとってお金とは何かを問い直す本もいくつか刊行されている。本書はお金と人類の関係史をその起源から現在、未来へと展望する好著。

 電子商取引の権威である著者は「マネーはテクノロジー」と言い放つ一方で、歴史をひもとくことを忘れない。この視点を常に持ち続ければ、私たちは現在起きている諸事象を改めて捉え直すことができる。反現金論、なぜ現金を取っておくのか、誰がマネーを作るのかなどをもう一度じっくり考察すると、自分は現実に存在するどの形態を、なぜ支持するのかという根拠を自己の中に構築できるのではないだろうか。

 ただ、著者は「マネーは(歴史の中で)中年期に差し掛かっている」としながら、タイトルではいまだ古代バビロニアのチグリス川を漂っているとも示唆している。私の感覚では、すでにフィンテックは後戻りのできないルビコン川を渡ってしまっているような気もするのだが……。

残り1078文字(全文1473文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事