週刊エコノミスト Online 独眼経眼

「良い金利上昇」ゆえに通貨安は伝染しない=渡辺浩志

図1 投資家のリスク選好度は依然強く、新興国通貨は下げ止まりへ
図1 投資家のリスク選好度は依然強く、新興国通貨は下げ止まりへ

 新興国通貨の下落が続いている。市場の関心は、これがトルコやアルゼンチンに限らず、多くの新興国へ伝染していくか否かにある。新興国通貨が下落する原因は大きくは二つ。(1)各国経済の不均衡と、(2)米国の金利上昇に伴う資金流出である。

 いま起こっているのは、(1)の各国経済の不均衡だ。トルコやアルゼンチンは経常赤字が大きく、高インフレであり通貨安圧力にさらされている。外貨準備が乏しく通貨防衛力が低いため、投機的な売りの対象になりやすい。これに対する正攻法は、政策金利の引き上げと緊縮財政だ。それによって経常赤字やインフレが是正されれば、通貨安はいずれ止まる。独裁政権が適切な政策を妨げているトルコは不幸な事例だ。

 各国経済の不均衡が引き起こすのはあくまでも通貨の「選別下落」であり、他国へ伝染する性質のものではない。一方、国外要因が原因の場合は、新興国間で通貨安が伝染し「無差別下落」を招く。最も起こる可能性が高い経路が、(2)の資金流出だ。

残り685文字(全文1106文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事