教養・歴史 Book Review

『情報と戦争』 評者・池内了

著者 ジョン・キーガン(軍事史家) 訳者 並木均 中央公論新社 3800円

有効活用は司令官次第? 戦時の情報戦を徹底分析

 昔から、戦争という緊急事態となれば、敵国の戦略・戦術を探り出す「情報(インテリジェンス)」をいかに正確に把握するかが戦争の行方を決める上で決定的であった。

 そのためにスパイを放ち、通信を傍受し、暗号を解読し、敵軍の動きを監視し、と情報戦が激しく繰り広げられてきた。本書では、イギリス海軍が、エジプト遠征中のナポレオン海軍を奇襲で破った1798年の戦い以来の戦略情報と戦争の様相を具体的な戦史に沿って整理している。

 私にとって特に興味が深かったのは、米国による日本の通信の傍受・暗号解読の下で戦われたミッドウェー海戦、Uボートを巡る大西洋の制海権を争ってのイギリスとドイツの情報戦、ナチスが開発した無人飛行兵器、V2ロケットに対するイギリスのヒューマン・インテリジェンス(人間を媒介とした諜報活動)の三つの話題であった。

残り811文字(全文1231文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事