国際・政治 統計の泥沼

「毎勤」問題の核心 国民が使える統計に=斎藤太郎

賃金動向が読みづらい
賃金動向が読みづらい

「毎月勤労統計」の不正問題が発覚したのは2018年末だが、筆者をはじめとしたエコノミストの多くは18年1月分の賃金上昇率が上振れした確報が公表された18年4月から同統計に悩まされてきた。

 現在も、厚生労働省のホームページで時系列データを入手しようとすると、絶望的な気持ちになる。現在と10年前の賃金水準を比較するにはどうすればよいのか。東京都の500人以上の事業所で3分の1抽出し、3倍復元を行った再集計値は12年以降のデータしか掲載されていない。再集計に必要なデータを廃棄、紛失したとされる04~11年のデータを何らかの方法で推計することによって長期時系列データの利用を可能にすべきだ。

 また、12年以降の景気回復局面における賃金上昇率はどのように計算すればよいのか。統計委員会と厚労省は「賃金の水準は本系列(17年までは旧サンプル、18年以降は新サンプル)、変化率は前年と共通するサンプルのみを比較した参考系列を重視すべき」としているが、参考系列は16年からしか存在しない。そもそも参考系列は季節調整値が存在しないので、異なる月(景気の底は12年11月、直近の実績値は18年12月)の…

残り2376文字(全文2870文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事