教養・歴史 書評

『両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』 評者・後藤康雄

著者 チャールズ・A・オライリー(スタンフォード大学経営大学院教授) マイケル・L・タッシュマン(ハーバード・ビジネススクール教授) 入山章栄/監訳・解説 冨山和彦/解説 渡部典子/訳 東洋経済新報社 2400円

探索と深化の両立目指し、組織運営の処方箋提示

 現代に生きる組織人必読の書の登場である。タイトルの「両利きの経営」とは、新興企業の神髄である大胆さと、成熟企業に必要な丁寧さの双方を実現する経営を意味する。言い換えれば、環境に応じて新分野を探る「探索」と、そこで得られた知識に基づき可能性を深掘りする「深化」を両立させるマネジメントである。本書は、経営学で確立されたこの重要な考えを、第一人者が多くの事例を交え解説した啓蒙書だ。

 企業の成熟につれ、リスクの高い探索活動より相対的に手堅い深化にウエートが偏りがちなのは、本書が指摘する通りである。その傾向は大企業で顕著かもしれないが、多かれ少なかれあらゆる組織に共通する。テレビドラマ化もされた人気小説『下町ロケット』はシリーズを重ね、主人公・佃社長が経営する中小企業もいくぶん成熟化が進んできた。危機感を持つ社長は、中核事業への偏重から脱し新規事業に乗り出そうとするが、社内外の…

残り774文字(全文1292文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事