週刊エコノミスト Online 11兆円市場 介護の勝者

インタビュー 辻哲夫 東京大学高齢社会総合研究機構特任教授 在宅介護支援は「内なる国防」

 これからは、一人暮らしが中心の超高齢社会となる。子供たちが介護の負担を恐れ、親とのかかわりさえ避ける国になってしまわないよう、在宅を基本とする介護支援システムを普及させなければ、内から人倫の基本が乱れかねない。在宅介護支援は「内なる国防」ともいえる。

 今後の超高齢化の過程で、必要な社会保障のために段階的な増税は不可欠だが、需要を正しく抑制するため、加齢によって心身が弱る「フレイル」の予防が大切だ。できる限り、最期まで口から食べられるようにし、施設でなくて住み慣れた家でなれ親しんだ生活を繰り返す。それを支援するのがベストケアだ。認知症の一人暮らしには、小規模多機能型居宅介護が有効だ。症状が進んだら介護の定期巡回をして、病気がちになったら在宅医療と訪問看護でみとりまで可能とする。

 施設では、経済的弱者は望む所に住み替えができないという問題がある。地域そのものを「屋根のない特養(特別養護老人ホーム)」にしてしまえば、誰もが住み続けられる。テクノロジーを併用すればできるはずだ。健康寿命を延ばしつつ、最期まで誰もが安心して心豊かに死を迎えられる社会を作る。そこにはお金をかける、という価値観が必要だ。

残り492文字(全文995文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事