教養・歴史 書評

『平成の経済』 評者・後藤康雄

著者 小峰隆夫(大正大学教授) 日本経済新聞出版社 1800円

前例なき混乱期の30年を各種要素別に精密に解説

 半世紀にわたり日本経済に向き合い続けてきた重鎮エコノミストが、平成期の全貌をつづった日本経済論である。著者も述べている通り、連続的に変化する経済と、年号に直接の関係はない。しかし、平成への改元はくしくもバブル絶頂期のタイミングに当たり、経済の分水嶺(ぶんすいれい)であった。その後の平成は、わが国が見習える前例に乏しい課題に翻弄(ほんろう)され続ける歴史であった。

 本書の描く平成絵巻は、絢爛(けんらん)たる極彩色の中に怪しさが垣間見えるバブル末期から始まる。「平成の鬼平」率いる日本銀行への喝采は混迷の入り口に過ぎず、幕は阿鼻叫喚(あびきょうかん)の図へと一転する。日本経済は崖っぷちで踏みとどまるも、構造改革への熱狂、政権交代への過剰な期待と失望、リーマン・ショックや未曽有の震災への緊急対応からアベノミクスへと、苦闘の連続で平成は終わる。

残り781文字(全文1208文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事