週刊エコノミスト Online 書評

『「追われる国」の経済学 ポスト・グローバリズムの処方箋』 評者・上川孝夫

著者 リチャード・クー(野村総合研究所主席研究員) 訳者 川島睦保 東洋経済新報社 2800円

新視点「ルイスの転換点」で有効なマクロ政策提示

 米中貿易摩擦の激化などで、世界経済の先行き懸念が強まり、先進国の金融政策は緩和競争の様相を呈してきた。しかし、長期的に見れば、先進国では低成長が一般化し、民間企業は資金余剰に転じている。書名にある「追われる国」とは、新興国に追われる先進国のことを指すが、いったい処方箋はあるのか。

 著者はかつて「バランスシート不況」という概念を提唱したことで知られる。バブル崩壊後の日本では、民間のバランスシートが毀損(きそん)し、債務の返済が最優先されたので、長期不況が続いた。しかし現在、追われる国では、この債務の最小化は、国内に魅力的な投資機会が存在せず、海外の資本収益率が高いという、もう一つの要因から生じている。

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