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オーストラリア ビール戦争第2幕が勃発=守屋太郎

酒販店ではクラフトビールの存在感が強まっている(筆者撮影)
酒販店ではクラフトビールの存在感が強まっている(筆者撮影)

 アサヒグループホールディングスが豪ビール最大手、カールトン・アンド・ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB)を約1兆2000億円で買収すると発表した。当局が承認すれば、日本企業の対豪M&A(合併と買収)で史上最大。キリンホールディングスが2009年に完全子会社化した同業2位ライオンネイサンと合わせ、日系2社が豪市場の約9割を寡占する。

 ビールは豪州の「国民酒」だが、買収への抵抗感は皆無だ。豪ビール業界は合従連衡を経て2社に集約。CUBもベルギーの世界最大手、ABインベブの傘下にあり、親会社がアサヒに移るだけで外資2強ががっぷり四つに組む構図は変わらない。

 17年のキリン調べでは、豪州の1人当たりビール消費量は71・2リットルと日本の約2倍。昨年のライオン酒類事業は、キリングループ連結事業利益の4分の1以上を稼いだ。移民受け入れの人口増で、今後も成長が見込まれる。

 ただ、1人当たり消費量はワインに押され減少が続き、近年はクラフトビールや高級輸入ビールも台頭。巨額買収は吉と出るか。アサヒとキリンが日本で繰り広げてきた「ビール戦争」。海外覇権をかけての第2幕が、南半球で切って落とされる。

(守屋太郎・日豪プレス特約記者)

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