週刊エコノミスト Online 書評

『人口減少社会のデザイン』 評者・井堀利宏

著者 広井良典(京都大学こころの未来研究センター教授) 東洋経済新報社 1800円

AIが導き出す未来展望 持続可能社会へ具体的提言

 人口減少が続く我が国では、社会保障や財政の持続可能性への懸念、経済活力の低下、限界集落の増大、格差の拡大などさまざまな困難が予想される。厳しいシナリオを描く類書も数多く出版され、人口減少社会に悲観的な読者も多いだろう。しかし、著者はローカルな経済循環をベースとした持続可能な福祉社会が構築できると主張する。そして、「日立京大ラボ」のAIを用いて2050年への明るい展望が持てるシナリオを探索して、あるべき政策選択のシミュレーション結果を報告する。

 AIによると、シナリオ選択では「都市集中型」か「地方分散型」かが最大の分岐点になる。前者では都市が発展する一方で地方は衰退し、格差も拡大するし、個人の幸福度は低下するが、政府の財政は持ち直す。後者では出生率が持ち直して格差も縮小し、個人の幸福度は増加するが、政府の財政は悪化する。

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