週刊エコノミスト Online 書評

『叱られ、愛され、大相撲! 「国技」と「興行」の一〇〇年史』 評者・池内了

著者 胎中千鶴(目白大学教授) 講談社選書メチエ 1750円

「日本的曖昧」の近現代史 外地にも及んだ熱狂の「国戯」

 幕内力士が暴力事件を起こしてクビになり、横綱白鵬の「品格」は何度も横綱審議会から注意を受けた。大相撲はゴタゴタを起こして騒がせ、その場限りの手打ちでなんとなく抑え込み、何事もなかったかのごとく「興行」は続き、人気は衰えない。まさに「国技」と呼ばれるにふさわしい日本的曖昧体質と言えよう。

 本書は、そんな大相撲100年の歴史を、「国技」と「興行」という相対立するキーワードで語ったものである。その力点は戦前に置かれており、登場人物の多くは力士ではないのが特色だろう。著者は台湾史が専門で、本書の舞台も植民地台湾や満州にまで及んでおり、相撲を軸とした日本の近現代史ともいえる。

残り855文字(全文1199文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事