教養・歴史 書評

『石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったか』 評者・将基面貴巳

著者 中島岳志(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授) NHK出版 1000円

華麗なる「大きな空虚」に戦後日本の本質を描き出す

 戦後日本は「石原慎太郎的」だ、と文芸評論家・江藤淳はかつて指摘した。つまり、石原慎太郎こそは、戦後日本をある意味で代表する存在だというのだ。1950年代後半以降、常に大衆の注目の的となってきたこの人物を描くことで、本書は「戦後という時代の核」を突き止めようと試みる。

 石原慎太郎は、戦後10年が経過した時代に、芥川賞受賞作『太陽の季節』で颯爽(さっそう)と世に出た小説家である。しかし、それから12年後には政界に身を転じ、自民党右派の政治家として活躍し、ソニーの盛田昭夫との共著『「NO」と言える日本』のようなベストセラーも世に送り出した。衆院議員辞職後は、東京都知事を3期と1年務めた。その間、石原は常に大衆から喝采を浴び続けてきた。本書は、そうした石原の華麗なキ…

残り788文字(全文1187文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事