経済・企業 コロナ首都封鎖で沈む・浮かぶ企業

資金繰り 十分な手元流動性確保と賃金・成長投資は両立可能 キャッシュリッチ経営の功罪は?=山田久

「コロナ後」には労働者への処遇改善も必要とされる(Bloomberg)
「コロナ後」には労働者への処遇改善も必要とされる(Bloomberg)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために経済活動が停滞している中、企業は、現金収入が激減しても、当面の給料、家賃などの支払いを手元資金でしのいでいる。日本企業は常々「資金を内部にため込んでいる」と批判されてきたが、今回の危機では手厚い手元流動性が効果を発揮しているようだ。

リーマン後に積み増し

 財務省の法人企業統計によると、手元流動性(現預金、短期保有の有価証券)が売上高の何カ月分あるかを示す比率は、2019年末で過去最高レベルの1・9カ月分近くに達した。第1次石油危機後の平均では手元流動性は売上高の1・5カ月分程度である。リーマン・ショック直前の07年は1・1カ月分程度で推移していたが、同ショック時に資金調達難を体験した経営者がリスク管理を徹底した結果、手元流動性を積み上げたとみられる。

 一方で、労働分配率(人件費÷付加価値額)は00年前後には70%を超えることもあったが、その後は下落基調をたどり、18〜19年は50%台後半〜60%台前半で推移してきた。00年前後には、年功賃金などによって人件費が高止まりしていた上、労働生産性が低下し、付加価値額が落ち込んだことが労働分配率を高めた。その後、年功賃金の是正や非正規労働者増によって人件費が抑制された結果が、今日の労働分配率に表れてい…

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