国際・政治 コロナ危機の経済学

国際政治 国家をしのぐ「超企業」の時代 揺らぐ既存国家の「虚構」=福富満久

エリザベス女王の演説は英国民に響いたか(Bloomberg)
エリザベス女王の演説は英国民に響いたか(Bloomberg)

 私は、キングス・カレッジ・ロンドンの戦争学研究科のシニア・リサーチ・フェローとして昨年8月から英ロンドンに滞在している。ロンドンは3月下旬からロックダウン(都市封鎖)に入り、この原稿締め切り時点で9週目になった。

 欧州では、新型コロナウイルスによる死者が多いことから、各国はいち早く国境封鎖に踏み切った。だが、国境を閉じてもどの国も国民に安全を保障することはできなかった。国家とは暴力装置を独占する代わりに安全を提供する制度である。強制力をもって徴税する機能を国家に認めているのも国家が安全(セーフティーネット)を提供してくれるという期待があるからだ。

 だが、「その金を国民に返すことが迅速にできない」と、どの国でも問題となった。結局コロナが暴露したのは、その装置が「虚構」「まやかし」「特権階級の所有物」だ、ということだった。

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