投資・運用 不動産コンサル長嶋修の一棟両断

スラム化マンション(下) 対策を急げ/58

スラム化を防ぐため、所有者でつくる管理組合による適切な管理が求められている
スラム化を防ぐため、所有者でつくる管理組合による適切な管理が求められている

 千葉県内のあるマンションで5年ほど前、筆者が創業したさくら事務所が協力して大規模修繕工事の費用を精査した。修繕費は7000万円と試算されたが、積立金が5000万円以上足りないことが判明した。

 不足分をまかなう方法は限られている。全20戸が数百万円ずつ一時金を出すことが考えられたが、このマンションには年金暮らしの高齢者世帯が複数おり、負担を強いるのは実質的に不可能。金融機関から修繕費を借り入れ、長年にわたりローンを払うといった手法も考えられたが、その場合は1戸当たりの月の修繕積立金を数万円も引き上げる必要があった。結局、難色を示す所有者が複数いたため話がまとまらなかった。

 もうすぐ築50年になるこのマンションは、いまだに大規模修繕ができていない。廊下などの共用部にはひび割れが目立ち、建物の老朽化は着実に進んでいる。こうしている間にも高齢の所有者が亡くなり、相続人が誰だかわからない住戸が発生し始めた。合意形成はますます難しくなっている。所有者でつくる管理組合が主体的に管理せず、管理会社に任せっきりにして、長期計画をなおざりにしていたツケが回ってきた。

残り885文字(全文1366文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事