週刊エコノミスト Online

高齢者の情報格差あらわに 大学生がワクチン予約支援 大学プレスセンターニュースダイジェスト〈サンデー毎日〉

「サンデー毎日7月11日号」表紙
「サンデー毎日7月11日号」表紙

拓殖大、昭和女子大…コロナ禍の高齢者支援に動く学生たち

 コロナ禍のもと、さまざまな問題が顕在化した。そのうち高齢者を巡っては、感染拡大を防ぐために地域の交流の場が閉ざされたり、住民のボランティア活動が休止したりして、独居や老老世帯の孤立が深刻になっている。また、65歳以上を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種の予約では、インターネットに不慣れな高齢者も多く、電話による予約が殺到し回線がつながらない事態が相次ぐなど、デジタルデバイド(情報格差)があらわになった。

 大学通信が運営するニュースリリースサイト「大学プレスセンター」では、2021年4月21日~5月20日までに配信したリリースのアクセス数を集計。今回のアクセスランキングでは、大学の地域住民が抱えるこうした課題をサポートする学生らの取り組みに注目した。

 拓殖大国際学部(東京都八王子市)の藍澤淑雄教授のゼミの学生らは5月2日から、キャンパス近隣の館ケ丘団地の高齢者を対象に、新型コロナウイルスワクチン接種のインターネット予約を手助けしている(16位)。

 ゼミでは2019年から活動の一環として「館ケ丘団地暮らし向上プロジェクト」を展開。住民に寄り添い、団地の自治会とも緊密に連携を取ってきた。その自治会が高齢者へのワクチン接種予約の支援にあたったところ、需要が予想外に多かったため、藍澤ゼミに協力を要請。これまでに累計177人の住民が訪れた。この試みを知った近隣の紅葉台自治会からも要請があり、5月22、23日には同大運動部に所属する学生らが高齢者のネット予約を手伝った。館ケ丘団地では2回目の接種予約に訪れる人も多く、1回目にサポートをした学生の顔を見ると、感謝の言葉とともに、身近な話題を親しく雑談するほほ笑ましい様子も見られたという。

 岡部優里奈さん(国際学部3年)は「今回の活動を通して困難に立ち向かうには地域のつながりが大事であることを知りました。ゼミ活動にもその知見を生かし、今後も活動を続けていく後輩たちにこの思いを伝えていきたいです」と話す。

 近くにスーパーがなく、交通手段もないお年寄りの買い物を支えるため「移動販売」も広がっている。利便性向上だけでなく、閉じこもりがちな高齢者の外出機会となり、見守りにも役立っている。

 東京都が17年から実施する「都営住宅における買物弱者支援事業」に、大学では初めて昭和女子大(同世田谷区)グローバルビジネス学部・髙木俊雄准教授のゼミが協力。ゼミでは19年から「地方創生×SDGs共同研究・実証プロジェクト」の取り組みとして、農家の販路拡大や耕作放棄地で学生が育てた無農薬、減農薬の作物の販売を行っている。高齢者をサポートしようと、5月22日からはゼミの学生が都営住宅「世田谷区喜多見二丁目アパート」を月2回訪れ、野菜を販売している(表外)。

 コロナ禍では非正規労働者が真っ先に解雇や雇い止めにあった。その多くを女性が占めるなど、雇用形態でも男女格差が浮き彫りになった。世界経済フォーラム(WEF)が21年3月に発表した男女の平等度を表す「ジェンダーギャップ指数」で日本は156カ国中120位と、主要7カ国(G7)では最下位となっている。

 日本の大学では理工系分野の入学者の女子比率がOECD諸国の中で最も低いことが課題だ。大阪大(大阪府吹田市)では22年度から数年間、理、工、基礎工学部の入学試験で優秀な成績を収めた女子の入学者50人に、1人あたり20万円の入学支援金を支給する(6位)。同大は文部科学省の16年度科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」の「牽引(けんいん)型」に採択され、女性研究者が子育てや介護と研究を両立できる環境づくりなどを推進。18年度の中間評価では最高のS評価を受けた。現在は同事業の幹事機関として、179機関が参画する「全国ダイバーシティネットワーク」を形成している。

 1位の青山学院大(東京都渋谷区)は来春、法学部に日本初の「ヒューマンライツ学科」を設置予定(設置届け出中)。貧困やジェンダー、性的マイノリティーなど国内外の人権問題の解決に貢献できる人材を育成する。

 ワクチン接種予約の支援を通じて学生と高齢者に交流が生まれた。多世代のつながりが地域の未来を支える。

(大学通信・上道敬子)

 6月29日発売の「サンデー毎日7月11号」には「大学プレスセンター ニュース・アクセスランキング」が掲載されています。

 他にも「衆院選 菅自民20減、都議選 都民フ1ケタも 選挙のプロがダブル予測」「家計埋蔵金36兆円が狙われる 経済のプロ座談会」「短期集中シリーズ しなくていいお葬式」などの記事も掲載されています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事