経済・企業 EV世界戦

巨大な蓄電池工場と化した欧州 テスラや中韓が続々と進出の理由は=高塚一

EUの本気 蓄電池工場の建設ラッシュ テスラ、中韓勢も続々進出=高塚一

 欧州で電気自動車(EV)向け蓄電池工場が相次いで稼働している。背景には、欧州でEVおよびプラグインハイブリッド車(PHV)の新車登録台数が急増し、今後も増加すると予測されていることがある。欧州では2020年に、136万8167台のEVおよびPHVが新車登録され、世界全体に占めるシェアは44・3%と最大の市場となった。

 欧州の自動車メーカーはEVシフトを明確にしている。独自動車大手ダイムラーの筆頭ブランドであるメルセデス・ベンツは21年7月、市場動向によっては30年までに販売する新車のすべてをEVにする可能性を視野に準備を進める、と発表した。また、フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下のアウディも21年6月、26年からEVモデルのみを発売し、33年までに内燃機関搭載車の製造を原則として終了すると発表している。(図の拡大はこちら)

高い輸送コスト

 国際エネルギー機関(IEA)の予測では、30年の世界のEV販売台数(トラックなどの商用車含む)は前提条件によって2576万台から4664万台で、うち欧州は約3割を占めるとしている。IEAはEV用蓄電池の需要も、30年に欧州が全世界の22~24%を占めると予測する。需要が見込まれることに加え、重い蓄電池を対象地域から運ぶ高い輸送コストを避けるためにも、欧州での蓄電池製造が必要となる。

 欧州での蓄電池生産は大きく三つに分類できる。一つは中国・韓国系メーカーが欧州に工場を新設、生産を行うものだ。中国系では、車載電池世界大手のCATL(寧徳時代新能源科技)がドイツ東部のエアフルトに工場を建設中で、22年に稼働予定だ。また、SVOLT(蜂巣能源科技)はフランスとの国境に近いドイツ・ザールラント州に工場を設立、23年の稼働を予定する。一方、韓国系は、LG化学がポーランド、SKイノベーション、サムスンSDIがハンガリーで蓄電池工場を稼働するなど、中・東欧諸国を拠点としているのが特徴と言える。

 二つ目は欧州地場企業が蓄電池生産を行うものだ。最も有名なのは、スウェーデンに本社を置くノースボルトだろう。同社はスウェーデン北部シェレフテオに生産能力60ギガワット時(GWh)のリチウムイオン電池セル工場を建設中だ。同工場は21年後半に生産開始予定で、同社は30年までに欧州での年間生…

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週刊エコノミスト

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