週刊エコノミスト Online 上場の呪い

創業455年ふとんの西川社長が語る非上場の「強み」

西川八一行・西川社長
西川八一行・西川社長

インタビュー 西川八一行・西川社長

創業以来455年間、創業家が非上場を続ける寝具の西川。過去の不況時に上場を検討したが、「メリット無し」と判断した。ライバルの上場企業との差別化を図るには、多数の株主の存在は妨げになるという。>>特集「上場の呪い」はこちらから

――創業以来、非上場を続けている理由は。

西川 当社は創業455年で、創業家出身の社長が私で15代続いている。布団など寝具商品は、売り上げに季節性があり、年間を通して一定ではない。非上場企業である当社は決算が年に1回だが、上場企業は四半期ごとの決算が求められている。場合によっては四半期決算で赤字も出ることがあり得る。

 株主から四半期の業績改善を求められて、無理に応えようとすると、安い商品を作って売り上げを伸ばすような事態になりかねない。家具業界では、ニトリや無印良品など当社とは違う価格戦略で寝具の事業をしているところもあるが、似たようなことはできない。上場した場合、株主からの要求はブランド価値の向上につながらない場合もあると考えている。

――上場を資金調達手段とする企業もいる。

西川 当社は土地などの資産を保有しており、あえて上場をするメリットはない。2021年1月期は、売上高は567億円で、流動資産243億円、固定資産198億円、利益剰余金92億円と、財務面では上場企業と比較しても中堅、またはそれ以上の水準にあると考えている。

過去には上場も検討

――過去に上場を検討したことはあるのか。

西川 今から8年くらい前、リーマン・ショック後に上場を考えたことがある。景気が厳しく大変な時期で、何か対策を打つべきだという議論が社内であった。いろいろ検討した結果、過去に分社化した東京、大阪、京都の3社を80年ぶりに統合し、そのときに求心力を保つため、統合会社として上場の可能性も検討した。しかし、上場並みの経営体制を構築する、という結論になった。

 仮に上場して大株主の企業ができると、そことライバル関係にある企業とは業務提携しにくいなどの制約もできる。当社は非上場だからこそ、企業価値を高めるために自由に他社とも提携できる。

――将来、上場の可能性はあるのか。

西川 今後、もし当社で上場があるとすれば、社内の新しい事業やそれを担う子会社などが上場することはあるかもしれない。

――最近の取り組みは。

西川 寝具を取り扱う会社として睡眠の研究をしている。これからは寝具の中にセンサーを入れて、それによって睡眠中の呼吸や心拍をはじめ睡眠の質が計測できる。それをもとに体調の変化も知ることができる。眠りについたことを感知したら自動で明かりを消すなども可能だ。10年後にはこうしたことが当たり前になっているだろう。

(聞き手=桑子かつ代・編集部)

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