資源・エネルギー 電力が危ない

今冬も電力が危ない=和田肇

 今年の冬の電力は大丈夫か……。

 最近、こうした声があちこちで聞かれるようになった。昨年12月から2月まで、西日本を中心に深刻な電力需給の逼迫(ひっぱく)が起きたからだ。2011年3月の東日本大震災による福島第1原発事故で各地の原発が停止に追い込まれ、実施された「計画停電」の一歩手前だったという。

 電力関係者が言う。「電力需給の逼迫は、年末から来年、再来年にかけて再び起こる可能性がある」。

 電力広域的運営推進機関の検証では、今年の冬が厳冬だった場合、西日本では、来年2月の電力予備力が安定供給に最低限必要な水準の3%に低下し、東京電力エリアでは、予備力がマイナスに転落すると予測している。このため東電地域では、他の電力会社から最大限の電力支援を受けても1月、2月の厳冬時の電力需要を賄えないことが判明した。(電力が危ない 特集はこちら)

大量のプルトニウム

 危ないのは電力需給だけではない。政府と電力業界が固執する核燃料サイクルは、1985年から40年近くたっても実現していない。このため、核燃料サイクルを前提に原発の使用済み核燃料(プルトニウム)を保管し続けてきた結果、プルトニウムの保管量は危険な水準に達している。

 専門家によると、その量は少なくとも原爆80発分に相当するという。国際的には実際に核兵器を保有せずとも、プルトニウムを一定量保管していれば、核兵器を持つ可能性があると見なされ、国際政治にマイナスの影響を与えることは言うまでもない。

 そして何よりも、未曽有の事故を起こした福島第1原発はどうなっているのか。現在、トリチウム水の処理が喫緊の課題となっているが、進展は容易ではない。「電力は産業のコメ」といわれる。産業、国民生活を支える屋台骨が揺らいでいる。

(和田肇・編集部)

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