国際・政治 ワシントンDC

「全米の全ての鳥は生き物ではなく、監視装置」 誰もが信じない明るい陰謀論がZ世代の心休む場所に=古本 陽荘

ネットを通じて広がった(「バーズ・アーント・リアル」のサイト)
ネットを通じて広がった(「バーズ・アーント・リアル」のサイト)

Z世代の心に安らぎ? 明るい風刺の陰謀論=古本陽荘

 全米の全ての鳥は本物ではない──。そんな「陰謀論」が注目を集めている。「Z世代」と呼ばれる1990年代半ば以降に生まれた大学生ら若い世代の間で広まっている。ところが、この陰謀論は「大統領選で大規模な不正があった」といった近年のものとは本質的に違う。誰もこの陰謀論を信じていないからだ。米国で陰謀論が飛び交うなか、それをあざ笑うかのような風刺としての陰謀論なのだ。

「鳥は国民を監視」

「鳥たちは本物ではない」という意味の「バーズ・アーント・リアル(BIRDS AREN'T REAL)」の主張を簡潔にまとめると以下のようになる。1959年から2001年にかけて、米連邦政府は米国に生息するあらゆる鳥を駆除し、全てをドローン(無人機)に置き換えた。そのドローン鳥は米国人を監視するための装置だ──。

 全くの荒唐無稽(むけい)な作り話。ソーシャルメディア(交流サイト)の公式アカウントでは「カモメからすぐに離れろ。政府がソフトウエアをバージョンアップした。カモメに見られただけでクレジットカード番号を盗まれる」などと警鐘を鳴らしている。

 奇妙な現象は偶然、始まったという。始めたのはピーター・マッキンドー氏(23)という男性で、普段はこの陰謀論を大真面目にメディアに語っている。「首謀者を演じている」と言った方が適切かもしれない。米紙『ニューヨーク・タイムズ』に舞台裏を明かし、同紙のポッドキャストが今年2月にインタビューの一部を公開した。

 マッキンドー氏によると、17年、南部テネシー州メンフィスを訪れていた際、女性の権利向上を求めるデモ隊に出くわした。デモ隊の周りには、これに反発するトランプ前大統領の支持者が集まっていた。やがてこの二つのグループは口…

残り578文字(全文1328文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月28日号

バイオ製薬最前線 肥満 がん 認知症第1部 創薬テーマ編肥満14 画期的な減量効果の治療 ノボ、リリー2強が世界席巻■中桐成美/中西拓司17 内臓脂肪減少薬 大正製薬が「アライ」発売 吸収抑えて25%を排せつ■中西拓司19 米国の現実 成人の「4割超」の深刻 国防にも影響するレベル■岩田太郎20 体 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事