経済・企業 グリーン素材・技術 

《最新特集》CO2を処分せよ② INPEX、三井物産がCCUSを大型ガス・石油開発で計画

三井物産が協業する米デンバリー社のEOR設備 三井物産提供
三井物産が協業する米デンバリー社のEOR設備 三井物産提供

CO2処分2 「回収・利用・貯留」事業を包括 INPEX、三井物産に存在感=段野孝一郎

 欧州連合(EU)が2018年にいわゆる「50年カーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)」目標を提唱して以降、欧州のみならず世界的に脱炭素に向けた取り組みが加速している。

 その中で今後の重要技術として位置付けられているのが、CCUS(二酸化炭素=CO2=の回収・利用・貯留)であり、今後の商用化に向けて、世界的にさまざまな実証事業が行われている。

 50年カーボンニュートラルの実現に向けては、原子力、再生可能エネルギー、グリーン水素など、CO2を排出しないエネルギーの活用がまず必要となる。

 しかし、これらだけで熱需要を含む全てのエネルギー消費を賄うことは困難である。そのため、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料も、CO2排出をうまく抑えつつ、引き続き活用していく必要がある。また、生産工程での温室効果ガス排出を実質ゼロに近づける「ブルー水素」の製造に当たっても、化石燃料を改質する際に発生するCO2を分離・回収する必要がある。化石燃料をうまく活用しつつ、カーボンニュートラルへ移行していかなければならない今後の「脱炭素への移行期」において、CCUSは、その懸け橋となることが期待されている。

大型計画は海外で

 CCUSは、(1)CO2回収、(2)CO2貯留、(3)CO2利用──の三つの技術から構成される。

 (1)CO2回収は、発電所や化学プラントなど、CO2を多量に排出する施設から、CO2のみを分離・回収する技術のことだ。CO2を液体に溶存させて分離回収する「物理吸収法」、固体吸収剤に吸収させて分離回収する「固体吸収法」、CO2分離機能を有する薄膜を活用して排出ガスからCO2を分離回収する「膜分離法」などがあり、分離機能の向上や、分離に要するエネルギーコスト低減などの技術開発が進められている。

 (2)CO2貯留は、地中深くの貯留可能な砂岩層などにCO2を圧入し固定化する技術を指す。

 (3)CO2利用は、回収・貯留したCO2を再利用する技術である。例えば、CO2の貯留に当たっては、地中深くにCO2を圧入する必要があるが、CO2を貯留するためだけに新規の掘削を行うのは経済的に非効率である。一方、既に開発した油田・ガス田などでは掘削井が存在するため、それら既存インフラを利用し、CO2を圧入・貯留する…

残り1613文字(全文2613文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事