教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

安倍元首相銃撃事件のショックからまだ抜け出せません/141

Q 安倍元首相銃撃事件のショックからまだ抜け出せません

 安倍晋三元首相銃撃事件があまりに予測不可能な出来事だったので、いまだにショックが消えません。まさか日本でこんなことが起こるとは思ってもみませんでした。(自営業・40代男性)

A 人生は不確実性の大洋を航海するがごとし。ゆえに「詩的な生活」が必要です

 たしかにこの事件は、政治的立場を越えて日本中にショックをもたらしましたね。銃規制の厳しいこの日本で、元首相が銃撃され、しかも亡くなったわけですから。事件の背景は解明中ですが、このショックをどうとらえ、哲学的にどう考察すればいいのか。

 ここではそのことに絞って話を進めたいと思います。参考にするのは、フランスの哲学者エドガール・モランの思想です。

 モランは、激動の20世紀を生き抜いてきた今年101歳になる現役の哲学者です。ユダヤ系であることもあって、第二次世界大戦時にはナチスに追われ、世界の数々の革命や突然の軍事侵攻を目撃し、そして今は私たちと同じようにパンデミックやロシアのウクライナ侵攻に心を痛めている人物です。

運命をめでる

 だからこそ彼は、人生の予測不可能性を強調します。「我々の運命は不確実であり、思いがけないものを想定する必要がある」と。あらゆる人生は不確実性の大洋を航海することだともいっています。

 その背景にあるのは、人生における偶然性という要素です。人生は確率的な割合で目が出るサイコロを振るのとは違って、何が起こるかなんて誰にもわからないのです。まずこの認識が大事です。

 そのうえで、どのようにして生きていけばいいのか? モランは、「詩的な生活」を勧めます。これは散文的な生活…

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週刊エコノミスト

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