投資・運用 やっぱり最強!米国株

米国株が長期投資に向く八つの理由=岡元兵八郎

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 なぜ、米国株が有望なのか。さまざまなデータから検討する。(やっぱり最強!米国株 ≪特集はこちら)

データでチェック!

 米国株を日本株と比較した場合、市場の構造や成長性などに大きな違いがある。長期的に八つの観点から見た米国株の強さを解説する。

理由1 米国人は「株式」で増やす

 日米の2000年と20年の1人当たりの金融資産を比較すると、米国は1343万円から3516万円と2.6倍に増えた。その間、日本は857万円から1549万円と1.8倍に増えただけだ。最大の違いは株式への投資の割合だ。米国人は資産の55%を株式や投資信託に投資しているのに対し、日本人は14%に過ぎない。

理由2 リターンは日本株の20倍

 米国と日本の代表的な株価指数であるS&P500とTOPIXの配当込みのパフォーマンスを円ベースで比較すると、1989年末を100とした場合、21年末までの32年間で、TOPIXは横ばいの105だったのに対し、S&P500は1988と約20倍近くに上る(図1)。米国株は保有し続ければ上がるので、長期投資向きだ。

理由3 右肩上がりを描く業績

 米国株の長期的な上昇は、業績に支えられている。S&P500採用銘柄の1株当たり利益(EPS)は、00年のITバブルの崩壊や08年のリーマン・ショックを経ても、右肩上がりのトレンドを描く(図2)。一方、TOPIXの1株当たり利益は日本経済と同様に上下動を繰り返し、それが株価にも表れている。

理由4 3000倍の上昇銘柄も

 個別株の値上がり率も米国の方が大きい。89年末から、22年6月末までの日米株の値上がり上位10銘柄を比較すると、日本株のトップはキーエンスの4008%(40倍)。それに対し、米国株はジャック・ヘンリー&アソシエイツの31万4772%(3148倍)だ(図3)。この会社は金融業界にITサービスを提供している。

 また、4位のベストバイは家電量販大手で、日本のビックカメラなどに相当する。家電量販店の株価がこれほど上昇するのは米国経済の規模が大きいだけでなく、人口も増加して家電製品に対する需要が大きいからだ。

理由5 配当利回り「37%」にも

 89年末にコカ・コーラ株に100万円投資した場合、今年6月末の株の評価額は1300万円。89年末は100万円の投資に対して配当金は1.8万円だったが、今年6月末時点では配当金は36.5万円にもなる。当初の投資額100万円に対する配当利回りは37%で、米国にはこのような「お宝株」を長期保有する個人投資家が多い。

理由6 日本と大差の研究開発費

 日米のトップ企業の研究開発(R&D)費を比較すると、昨年1年間は日本の上位10社の合計が年5.3兆円に対し、米国は25兆円と5倍近い差がある。米アマゾン1社だけで6.1兆円と日本企業10社を上回っている(表1)。こうした潤沢な投資で米国企業はさまざまな商品やサービスを開発しているため、日本企業が勝つのはなかなか難しい。

理由7 経営陣と株主の利害一致

 米国では、経営陣の何十億円もの給与や報酬の大半が株価に連動しており、株主と利害関係が一致している。日米のインサイダー(上場企業の役職員や大株主など)の株式の保有割合(22年8月時点)は、日本の0.6%に対し、米国は1.7%。また、米国のインサイダー比率が高い上位10社の年初来の平均リターンはマイナス6%と、S&P500のマイナス10%より高い(表2)。

理由8 日米の経済格差は今後も拡大

 米国は世界最大の移民の受け入れ国で、あらゆる経済活動の基礎となる人口が増えている。世界の移民人口の19%が米国を選び、米国の全人口のうち、15%が米国外で生まれている。

 世界銀行によると、米国の人口は22年の3億3400万人から、50年には3億7600万人に増える。その間、日本は1億2500万人から1億500万人に減少。日米の人口の差は、2.7倍から3.6倍に拡大する。

 また、移民の国であるがゆえに、さまざまな考えを持った人が自由に発言する風土があり、それが企業のイノベーションの源泉となる。OECD(経済協力開発機構)によると、日米の実質GDP(国内総生産)の差は、22年の4倍から、50年には5.3倍に拡大する見通しだ。

(岡元兵八郎、マネックス証券チーフ・外国株コンサルタント)

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