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インフレ率は7月も2%超だったが、経済減速で来年以降は低下の見通し=永浜利広

 総務省が8月19日に発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合(コア)が前年同月比2・4%上昇となり、4カ月連続で日銀が目標とするインフレ率2%を上回った。さらに、インフレ率は前月から0・2ポイント拡大しており、季節調整値の前月比で見ても0・5%上昇と加速している。

 インフレ率が加速している背景には、これまでインフレ率押し上げの主因となってきたエネルギーに、食料品値上げの加速や携帯電話端末の大幅値上げが加わったことがある。しかし、今後を展望すれば、エネルギー価格の伸びは早晩ピークアウトの可能性がある。

 というのも、足元ではエネルギー価格の元となる原油価格が、今年3月には1バレル=130ドル台へ高騰していたが、現在は90ドル前後まで下がっており、すでにガソリン価格の値下がりに結び付いている。原油価格が再度急騰するようなことがなければ、電気・ガス料金も年末から年明けにかけて低下に転じる可能性が高い。

大幅値上げの携帯

 ただ、足元では政府の補助金によりガソリンや灯油の価格が抑制されているため、政府が化石燃料価格の下落を反映して補助金を引き下げれば、エネルギー価格のピークアウトが遅れる可能性があろう。

 一方、生鮮製品を除く食料品の価格については、すでに穀物価格自体はピークアウトしているものの、円安傾向が続いていることから、今後もしばらく価格転嫁が続く可能性が高いだろう。ただ、当初は10月の政府の輸入小麦売り渡し価格がロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて大幅に引き上がることが懸念されていたが、岸田文雄政権が価格を据え置くと表明。年末から来年にかけての小麦関連製品の大幅値上げは回避されそうである。

 加えて、7月以降に相次いだ携帯電話端末価格の大幅値上げのように、円安の進展を理由に耐久財や衣類などの値上げもしばらく続きそうだ。となると、インフレ率は今後も加速する可能性が高い。実際、日本経済研究センターが公表している民間エコノミストへのアンケートを集計した8月分の「ESPフォーキャスト調査」によれば、CPIコアインフレ率は今年10~12月期にピークを迎える見通しとなっている。

そもそも需要不足

 ただ、来年以降のインフレ率は低下する可能性が高いだろう。というのも、足元のインフレ加速は輸入物価上昇に伴う「コストプッシュ」によるものであるが、すでに原因となる1次産品の国際商品市況はピークアウトしているからである。持続的なインフレの維持には、需要の増加による「ディマンドプル」インフレが必要だが、来年にかけて世界経済は減速が強まる可能性が高く、そもそも日本は海外と異なり需要不足である。

 このため、来年以降はコストプッシュインフレ圧力の低下により日本のインフレ率は低下に転じ、コアCPIのインフレ率もプラス0%台まで下がるとみている。

(永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミスト)

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