経済・企業 EV&電池 世界戦 

“クルマだけ”じゃダメ!テスラ製スマホが生む「新しい価値」 土方細秩子/編集部

イーロン・マスク氏のスペースXは「スターリンク」でT-モバイルの携帯電話向けに通信網の接続を提供(2022年8月25日発表) Bloomberg
イーロン・マスク氏のスペースXは「スターリンク」でT-モバイルの携帯電話向けに通信網の接続を提供(2022年8月25日発表) Bloomberg

 数年前からテスラが「モデルπ(パイ)」と呼ばれるスマホの製造に乗り出すといううわさが流れている。社長のイーロン・マスク氏が新車発表イベントで映像として紹介したこともあり、2022年後半あるいは23年にも発売になるのでは、と言われているが、テスラは現時点では一切公表していない。

 スマホ産業への参入は、テスラにとっては非常に理にかなったビジネス拡張だ。多くの自動車メーカーが、車載OSであるグーグルの「アンドロイドオート」やアップルの「カープレイ」などと連動させて車内エンターテインメントシステムを構築する中、テスラは独自の自動運転システム「オートパイロット」と連動させた車載ナビなどを提供している。

 テスラがスマホを作ることで、テスラ車のユーザーは、アンドロイドオートやカープレイを使わずにストレスのない操作感を得られ、かつ、テスラはユーザーデータの一元化を実現できる。これが非常に大きなビジネス機会になり得る。

 なぜなら、テスラ車のユーザーの車内空間における行動を把握できれば、消費行動を分析把握でき、そこから得られたビッグデータを活用したさまざまなビジネスが期待できる。さらに、車載端末から通信、クラウド支援まで今後、自動車向け事業の急拡大が見込める。

 テスラの場合、すでに世界で300万台のEVを販売し、そこから集めたデータと独自のスーパーコンピューター「Dojo」を連動させ、高度な運転支援や自動運転へのフィードバックといったシステムを構築しつつある。

マスク氏の果てしない構想

 ガソリン車と違って電気自動車(EV)は、電気で動く車載センサー類と相性がいい。クルマや人の行動履歴や運転状況だけでなく、道路上の信号からバス停の待ち人まで、あらゆる情報、さらにはあらゆる場所で、どのように走行したかといった大量のデータを集めやすい。マスク氏はその重要性に気づいているのだ。

 さらに関連会社である宇宙ビジネス企業「スペースX」が運営する低軌道衛星網「スターリンク」により、地球上のどんな場所にいてもスムーズな通信環境が提供できる。

 テスラのスマホOSと走行系OSの親和性を高めることで、スマホからク…

残り484文字(全文1384文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事