経済・企業 挑戦者2022

デカフェコーヒーの魅力広める

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

岩井順子 ストーリーライン代表取締役

 欧米では健康志向の人を中心に人気が高いデカフェコーヒー。日本ではあまり普及していないが、市場の潜在性は高いとみられる。(聞き手=斎藤信世・編集部)>>これまでの「挑戦者2022」はこちら

カフェイン除去を東北大と共同研究

 カフェインの量を選べるコーヒーショップ「CHOOZE COFFEE(チューズコーヒー)」の運営などを行っています。値段は高いけれどおいしくないイメージが強いデカフェコーヒーですが、そのイメージを覆したいと思っています。

チューズコーヒーで販売するコーヒー豆
チューズコーヒーで販売するコーヒー豆

 販売する商品は全て品質にこだわった「スペシャリティーコーヒー」です。主な商品は、一般的なカフェイン量が入っている「レギュラー」の他、カフェイン量が少ない「ハーフ&ハーフ」、カフェインレスの「デカフェ」の3種類です。価格はMサイズ390円(税込み)~となっています。

 今年10月17日にオープンし、現在は実証店舗として運営しています。まだオープンしたばかりですが、想定していた顧客層である妊婦さんやカフェインを摂取できない人以外の来店も意外に多いです。

 我々が提供するコーヒーは、二酸化炭素を超臨界流体の状態にしてカフェインを抽出する「超臨界二酸化炭素抽出法」を用いて作られています。安全性が高い上、高圧処理をするので仕上がりも早いです。

 カフェイン除去方法については、2018年から東北大学工学研究科と共同研究を行ってきました。今後はその技術をアフリカのルワンダに持っていき、現地生産のコーヒーに付加価値を付けるというようなことをやっていきたいと思っています。24年には、同国で量産を開始する予定です。

海外生活でデカフェに出合う

 デザイン会社で働いていた際に、米国のポートランドに住んでいました。その当時は、焙煎(ばいせん)の仕方にこだわる「サードウエーブコーヒー」がとてもはやっていた時で、町中がコーヒーショップであふれていました。元々コーヒーが好きだったこともあり、帰国後もおいしいコーヒー探しをすることが楽しみでした。

 そんな頃、娘が妊娠し、デカフェコーヒーしか飲めなくなったんです。それで初めてデカフェコーヒーを飲んでみたのですが、「おいしくない!」と思いましたね。ならば、自分でおいしいデカフェコーヒーを作りたいと思ったのが起業のきっかけです。

 資金調達には苦労しています。ですので、毎日のように投資家に会っているのですが、その中で分かったのは、意外にもデカフェへの関心が高いということです。UCC上島珈琲(神戸市)が実施したアンケート結果でも、デカフェコーヒーの認知度は回答者の7割以上に上っています。ですが、実際に飲んだことがある人は約3割とまだまだ日本では一般的でないのが現状です。

 コーヒー市場の世界規模は約10兆円といわれています。その中で、デカフェコーヒー市場の規模はまだ小さいですが、潜在性は高いと思っています。ですので、将来的には米国や中国にも進出し、実証店舗の開業も視野に入れています。


企業概要

事業内容:カフェイン量を選べるコーヒーショップ「CHOOZECOFFEE」の運営など

本社所在地:東京都世田谷区

設立:2018年7月

資本金:約5900万円

従業員数:6人


 ■人物略歴

いわい・じゅんこ

 1962年愛知県生まれ。84年に愛知県立芸術大学卒業。メーカー勤務やフリーランスのデザイナーなどを経て、デザイン会社「Ziba Design」に入社。2018年7月にストーリーラインを設立。60歳。


週刊エコノミスト2022年11月29日号掲載

岩井順子 ストーリーライン代表取締役 デカフェコーヒーの魅力広める

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