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マクロ経済で説明できない世界生産の伸び悩み状態 藻谷俊介

 昨今の世界金融市場の世論を見ると、インフレを過大評価する傾向は修正されてきたが、不況に対する懸念はますます増大する傾向にある。実際、米国製造業の景況サイクルを示す11月のISM製造業購買担当者景気指数は、好不況の境目となる50を約2年ぶりにわずかながら割り込んだ。

 グローバルでの鉱工業生産も完全に頭打ちになっている。図1は主要17カ国の鉱工業生産をGDP(国内総生産)の規模に応じてウエートを掛けて1本に合成した当社の世界鉱工業生産指数であるが、10月にわずかながらマイナスとなり、ISM指数同様に踊り場でとどまるのか、このまま減少に転じるのかの分かれ目にある。

 このような状況に至ったことについて、米国を筆頭にした急速な金融引き締めや、厳格なロックダウンによる中国経済の低迷などが原因と考える向きがあるようだが、必ずしもそう断定できないところが今のマクロ景気判断を難しくしている。業種別に見るとばらつきが大きく、普遍的、マクロ経済的な要因によるものと言い切れないところがあるのだ。

 セクター別に見た第一の要因は、電子部品・デバイス産業の調整だ。日本、韓国、台湾のデバイス生産(主に半導体)は季節調整ベースでピーク時からおよそ1~2割減少しており、在庫率は低下に転じたもののいまだ生産底入れの確信が持てない状態だ。金利上昇より、世界的なシリコンサイクル(半導体需要の周期性)に従ったものと思われ、…

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週刊エコノミスト

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