週刊エコノミスト Online 広島サミットで考える

脱炭素競争力ランキング(自動車関連)首位は効率良く稼ぐトヨタ 杉浦誠司

 自動車関連業界にとって喫緊の課題である脱炭素の取り組みをランキングでまとめた。(表の拡大はこちら)

>>特集「広島サミットで考える」はこちら

 自動車業界では、中長期的に脱炭素(カーボンニュートラル)の取り組みが重要な経営課題となっている。このテーマは今後、企業間の競争力格差を決定するとして注目される。

 そこで、筆者は脱炭素競争力を測る独自の評価指標「炭素生産性指標」を作成し、自動車関連業界の「脱炭素競争力ランキング(2021年度)」としてまとめた。統合報告書や環境報告書などを開示している大手企業を対象に、時価総額トップ40社について、21年度(22年3月期あるいは21年12月期)の試算結果をランキング形式で掲載した。分析結果は株式投資での銘柄選択におけるひとつの視点を提案することにもなろう。

 炭素生産性指標は、キャッシュ利益ともみなせる「EBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)」÷CO₂(二酸化炭素)総排出量で算出する。売上高利益率(売り上げに対する利益の割合)の計算式について、売上高をCO₂総排出量に置き換えたイメージである。事業活動に伴って排出されるCO₂総排出量に対して、いかに効率的に利益を上げ、それを原資にさらなる事業の成長と脱炭素への取り組みを加速することができるかどうかという潜在力を測ろうとしている。

 脱炭素競争力ランキングの首位はトヨタ自動車となった。世界で約800万台の車両を生産して営業収益31兆円を上げる活発なグローバル規模での事業活動を展開しているので、CO₂総排出量も624万トンに及ぶのは当然といえる。ただ、炭素生産性では、業界最多のCO₂を排出しながら、EBITDAを4.8兆円も稼いでいるので効率性は高い。

 2位にSUBARU、3位にショックアブソーバーや油圧機器を担うカヤバ、4位にホンダ車のシート(座席)供給に携わるテイ・エス テック、5位にディーゼルエンジンやコンプレッサーを手掛ける豊田自動織機と、おそらく投資家には意外感のある多彩な上位陣の顔ぶれとなったと思う。

下位にタイヤメーカー

 自動車メーカーでは、単にEV(電気自動車)の生産…

残り1005文字(全文1905文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事