経済・企業 GX150兆円

水素・アンモニアに7兆円 JERAが米で水素混焼へ 段野孝一郎

水素燃焼のための改良工事を完了した米リンデンガス火力発電所(ニュージャージー州)JERA提供
水素燃焼のための改良工事を完了した米リンデンガス火力発電所(ニュージャージー州)JERA提供

 二酸化炭素(CO₂)フリーの水素はまだ高価格だが、GX推進法により先行企業はコスト差額の補填が受けられる。水素・アンモニアの供給インフラは10年内に大規模供給拠点3カ所、中規模供給拠点5カ所が整備される見通しだ。

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 日本の二酸化炭素(CO₂)など温室効果ガスの排出は、「エネルギー起源CO₂」が大半を占める。「エネルギー起源CO₂」とは、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料を燃やして作り出したエネルギー、つまり電気やガスを、産業界や家庭が使うことで生じるCO₂という意味だ。

 このため、電力・ガス、とりわけ電力分野のCO₂削減に取り組み、同時に電気自動車の拡大など「電化」を進めることが必要となるが、火力発電所や都市ガスなど、どうしても熱や液体燃料を使用する分野では電化が難しい。そこで注目されているのが、燃焼(激しい酸化還元反応)時にCO₂を排出しない水素やアンモニアを、化石燃料の代替として利用する動きだ。水素・アンモニアが脱炭素対策全体の柱といってもよい。

 水素は今まで利用されていなかったわけではなく、製鉄・石油精製、化学プラントなどの製造過程で発生する「副生水素」や、「化石燃料改質水素(グレー水素)」があり、主にプラント内で利用されていた。だが、再生可能エネルギーの拡大とコスト低減によって、再エネの電気で水を電気分解して水素を生産する「CO₂フリー水素」(グリーン水素、製造過程でCO₂を排出しない水素)が現実味を帯びてきた。

 化石燃料由来の水素も、製造過程で生じたCO₂をCCS(CO₂回収・貯留)などで固定化すれば、CO₂フリー水素(ブルー水素)となる。こうした水素の「グリーン」や「ブルー」といった色分けも今後は変わり、CO₂排出量を基準にした「炭素集約度」に基づく認証が検討される見通しだ。

目標30円へ、70円の開き

 CO₂フリー水素は、大気中などから回収したCO₂と化合することでメタンとなり、天然ガスの代替や化学産業の原料に活用することが可能だ。また、「フィッシャー・トロプシュ法」という合成方法(FT合成)によって、メタノールやガソリンの代替物を生産することも可能だ。さらに、窒素と化合させれば「CO₂フリーアンモニア」を作ることができ、農業分野のCO₂削減や内燃機関の燃料とすることもできる。

 水素のままだと燃焼速度が速く、石炭などの化石燃料と混焼することは難しいが、アンモニアにすれば石炭と燃焼速度が同程度となり、石炭火力発電所で利用すれば化石燃料の消費削減につながる。こうした背景から、政府が策定した「水素戦略」における水素とは、ア…

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