経済・企業 GX150兆円

再生可能エネルギーに20兆円 期待集めるペロブスカイト太陽電池 土守豪

ペロブスカイト太陽電池は非常に軽く折り曲げも可能 東芝提供
ペロブスカイト太陽電池は非常に軽く折り曲げも可能 東芝提供

 政府のGX基本方針では、再生可能エネルギーに今後10年間で20兆円の投資を実施するとしている。次世代型太陽電池として脚光を浴びるのが、ペロブスカイト太陽電池だ。

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 太陽電池は光のエネルギーを電気のエネルギーに直接変換する。その材料はシリコン系(原料はケイ石)、化合物系、有機系に分類され、現在、普及している太陽電池の95%以上はシリコン系が占める。化合物系は人工衛星用太陽電池など、高付加価値分野に用いられる。有機系は研究段階だが、次世代の太陽電池として注目を集めているのが有機系のペロブスカイト太陽電池だ。

 太陽電池は技術開発により発電効率の向上や低コスト化が進んできた。ただ、シリコン系はシリコンの生産に大きなエネルギーを使ううえ、硬くて重い素材なために設置場所が限られていた。ペロブスカイト太陽電池は発電層が超薄膜であるため、シリコン系や化合物系に比べ非常に軽量で、折り曲げることも可能。量産できれば生産コストも安価で、建物の壁面や工場の屋根など耐荷重性の低い場所にも設置できるメリットがある。

 ペロブスカイトとは灰(かい)チタン石のことで、立方体の中に八面体を含むような特徴的な構造を持つ(図1)。この構造が「ペロブスカイト構造」と呼ばれており、構成する原子の種類によって超電導(冷却した時に電気抵抗がゼロになる現象)などさまざまな特性を持つことが知られている。これを2009年、太陽電池に使うことを提案したのが、桐蔭横浜大学の宮坂力教授だ。

 ペロブスカイト太陽電池は、塗布による製造が可能など量産性に優れているのも特徴。塗布のため大面積の太陽電池を作れる可能性もある。低い照度で発電できる点もメリットだ。現在はハロゲン化鉛ペロブスカイトといった材料が盛んに研究されているが、課題はシリコン系に比べて劣る耐久性や変換効率の向上、有害元素の置き換えなどで、温度管理手法など製造プロセスの最適化も開発の途上にある。

JERA・積水化学が実験

 すでに多くの日本企業が、国内と世界市場におけるペロブスカイト太陽電池のシェア獲得を見据えて、実用化に向けた研究開発に力を入れている。

 東京電力グループと中部電力の合弁会社JERAは、国内最大の化石燃料調達と発電事業を持つが、ペロブスカイト太陽電池の早期実用化を目指している。積水化学工業と共同で実証実験に取り組んでおり、積水化学はフィルム型ペロブスカイト太陽電池研究・開発の最先端企業とされる。

 JERAと積水化学は今年3月から横須賀火力発電所(神奈川県)と鹿島火力発電所(茨城県)構内に、同太陽電池を設置し、耐塩害性の検証、発電効率測定などの共同実験を開始している。1メートル四方の同太陽電池を角度0度、30度、90度で3枚設置し、検証する。火力発電所構内での同太陽電池の実証実験は国内初だ。

 横須賀火力発電所では、25…

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