法務・税務 インボイス&電帳法

インボイスは受け取る側も要チェック 爆発的に増える経理事務 土屋裕昭

インボイス制度開始後は受け取る側も請求書や領収書のチェックが必要 mapo/PIXTA
インボイス制度開始後は受け取る側も請求書や領収書のチェックが必要 mapo/PIXTA

 消費税を支払う際、インボイスによらなければ納税負担が増す。そのため、受け取る請求書がインボイスかどうかの確認作業が必要だ。

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 消費税のインボイス(適格請求書)制度がスタートする今年10月以降、フリーランスや個人事業主の負担増がクローズアップされるが、一般の課税事業者の経理事務も負担が格段に増す。消費税を巡っては不課税取引や非課税取引、軽減税率の取り扱いといった従来の業務に加え、インボイスの請求書処理や、さらに来年1月には改正電子帳簿保存法(電帳法)の対応も必要になり、経理作業が爆発的に増えることが予想される。

 消費税は受け取った消費税から支払った消費税を差し引き(仕入れ税額控除)、その差額を申告して納税する仕組みだ。インボイス制度が始まった後は、インボイスによる消費税の支払いしか仕入れ税額控除が認められなくなる。つまり、インボイスによらない請求書に基づいて消費税を支払っても、支払った側は消費税の納税負担だけが増してしまう。そのため、受け取った請求書がインボイスかどうかの確認が極めて重要だ。

 では今年10月以降、課税事業者の経理業務はどのように増大するのか。一般的な企業でいえば、従業員などから提出される請求書、領収書やレシートを経理サイドが事務処理しているが、これらはインボイス登録事業者が発行したものか、未登録事業者のものかをチェックする作業が生じる。仕入れ税額控除を受けるためには、登録事業者が出した請求書、領収書などが必要なためだ。

手書きの請求書に注意

 インボイスにはそもそも、①取引の年月日、②発行事業者の氏名または名称、③インボイスの登録番号(T+13桁の番号)、④受取人の氏名や名称、⑤取引内容(軽減税率の対象品目が示されているか)、⑥適用税率、⑦税率ごとの消費税額、⑧税率ごとの取引金額──が記載されていなければならず、これらを満たしていなければ消費税を支払っても仕入れ税額控除ができない。

 特に、インボイスの登録番号については、その番号が誤っていないか、偽造されていないかなどを、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認する必要がある。事務作業の足を引っ張りそうなものとしては、「手書きの請求書」も想定される。手書きやエクセルで作成されたものでも、登録番号などインボイス制度として必要な事項が記入されていれば正式な請求書として認められるためだ。

 受け取ったインボイスに、登録番号の記入ミスや漏れなどがあれば、これも仕入れ税額控除の条件を満たさなくなる。しかし、インボイスの修正は発行事業者側しかできず、受け取った側が修正すれ…

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