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SBI証券と楽天証券が日本株の手数料無料化へ 新NISA目前に積極攻勢 大山弘子

 SBI証券は、9月30日の注文分からインターネットコースの顧客について、日本株の現物取引、信用取引、単元未満株の売買手数料を無料化する。現状では、現物取引の場合、1注文当たり55~1070円がかかるが、それが無料になる(表、拡大はこちら)。

 ただし、円建ての取引や米国株信用取引の各種報告書、外貨建て取引(米株信用を除く)の各種報告書、特定口座年間取引報告書を郵送から電子交付に切り替えることが条件となる。

 同社では、2019年に、オンライン取引の日本株の売買手数料や一部費用を無料化する「ネオ証券化」構想を発表。21年4月からは25歳以下を対象に日本株現物株取引の手数料を無料化しており、今回、その対象を一気に拡大した。

 楽天証券でも、10月1日(10月2日約定分)から、日本株の現物取引、信用取引の売買手数料が無料になる「ゼロコース」を新設。日本株取引手数料コースで、「ゼロコース」を選択した場合に、手数料が無料になる。

 また、単元未満株や「超割コース 大口優遇」の日本株の現物取引、信用取引の手数料を0円に引き下げる。併せて、日本株の手数料コースに関わらず、外国株(米国、中国、アセアン株)と先物・オプション取引、金・プラチナ取引にかかる手数料の1%をポイントバックするプログラムもスタートする。

20、30代の口座増

 日本株の手数料無料化の背景には、24年から始まる「新NISA(少額投資非課税制度)」がありそうだ。金融庁が8月8日に公表した、23年3月末時点のNISA口座数は、22年12月末時点より4%増え、1873万5320口座となった。

 なかでも目立つのが、20代や30代の増加率だ。20代の口座数は5.3%増の192万2968口座、30代は4.7%増の326万5737口座と、関心の高さがうかがえる。

 新NISAでは、非課税保有期間が無期限化され、長期・積み立て・分散投資に適した一定の投資信託の積み立てを行う「つみたて投資枠」と、個別株式にも投資可能な「成長投資枠」を併用できるようになる。

 ただし、NISA口座は1人1口座しか開設できない。また、非課税保有限度額が1800万円(うち、成長投資枠1200万円)あることから、NISA口座を開設した金融機関に資産を集中させる可能性も高い。日本株の売買手数料無料化は、新たに証券口座やNISA口座を開設する人や、新NISAの開始を機会に金融機関の変更を考えている人が、証券会社を選ぶ際の判断材料になる可能性はある。

 ちなみに、23年6月末時点では、総合口座数はSBI証券が1046万口座と、楽天証券の924万口座や野村証券の539万口座を上回る。だが、NISA口座数では楽天証券が449万口座と、SBI証券の370万口座、野村証券の168万口座を上回っている。

(大山弘子・マネーライター)


週刊エコノミスト2023年9月19・26日合併号掲載

FOCUS 日本株の手数料無料化 SBI、楽天証券が実施へ 新NISA目前に積極攻勢=大山弘子

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