教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

どう創造性を発揮すれば、AIの進化に対処できますか/197

マーガレット・ボーデン(1936年〜)。イギリスの哲学者。認知科学やAIを専門としている。著書に『人工知能と人間』などがある。(イラスト:いご昭二)
マーガレット・ボーデン(1936年〜)。イギリスの哲学者。認知科学やAIを専門としている。著書に『人工知能と人間』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q どう創造性を発揮すれば、AIの進化に対処できますか AI(人工知能)の進化に伴い、人間にはより一層の創造性が求められるといいます。しかし、私にはそんな素養はありません。どうすれば創造性を発揮できるでしょうか?(研究職・40代女性)

A 新しさ、価値、驚きを意識し物事に向かえば、創造性は発揮できます

 ご指摘のように、今かつてないほど人間に創造性が求められています。というのも、AIも創造性らしきものをすでに発揮し、絵を描いたり小説を書いたりさえし始めているからです。しかも人間の作品と見まがうほどのクオリティーです。

 はたして、そんな中で誰もが創造性を発揮することができるのかどうか。そこで参考にしたいのが、イギリスの哲学者マーガレット・ボーデンの創造性に関する理論です。彼女によると、創造性とは新しくて価値のある驚くべきアイデアのことを指します。

 たしかに世の中にとって新しいものでなければ、創造性があるとはいえないでしょう。また、何らかの価値がないと、単なる風変わりなものにすぎません。面白いのは驚きが必要だといっている点です。これまでなかったというだけでは、創造性とはいえないのです。「すごい」と思えるレベルが求められるということです。

方法は既存の中にある

 そう聞くとますます創造性を発揮するのは難しいように思えてきます。でも、ボーデンが分類する創造性の三つの形態を知れば、方法がわかるのではないでしょうか。一つ目は結合的創造性です。これはいわば組み合わせのことです。既存のものを組み合わせるだけで創造性は発揮できるのです。

 二つ目は探索的創造性です。既存の概念空間の中でまだ見いだされていな…

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