国際・政治 ワシントンDC

現実味増す「トランプ再来」が同盟国の外交・安保に落とす影 多田博子

米アイオワ州で選挙集会を開いたトランプ氏。再選はあるのか(Bloomberg)
米アイオワ州で選挙集会を開いたトランプ氏。再選はあるのか(Bloomberg)

「トランプ前大統領が勝利したらどうなるのだろうか」。大統領選まで1年を切り、内政・外政の両面でバイデン大統領が対応に苦慮する中、ワシントンDCでも「トランプ再来シナリオ」がささやかれるようになった。

 こうした中、3大テレビネットワークの1社であるCBSと調査会社ユーガブが共同実施した最新の世論調査の結果には目を見張った。過半数の有権者が「トランプ氏が勝利した場合、自分たちの懐は豊かになり、米国が関与する戦争は減る」と答えている。共和党内の岩盤支持層に支えられて、党内では支持率トップを独走中のトランプ氏だが、国民の4割を占める無党派層からの支持は高くないのではと想像していた。これは思い違いだということだ。

短期的にはメリット大?

 再選された場合のトランプ氏の政策は、①法人税・所得税の減税、②中国からの輸入品への関税付加、③連邦政府組織・人員のスリム化、④ウクライナ支援の縮小または凍結、⑤パリ協定再離脱──などが想定される。トランプ氏の強固な支持層である「忘れ去られた白人層」のみならず、ごく普通の米国民の生活にとってトランプ氏復活は短期的には、むしろメリットの方が多いとみられる。

 では、トランプ氏再選の場合の米国の景気への影響はどうであろうか。

 歴史をひもとけば、第二次世界大戦後に大統領選で現職が敗北を喫した例は4回あり、1976年のフォード(共和党)、80年カーター(民主党)、92年ブッシュ(共和党)、そして2020年のトランプ(共和党)の各氏である。この4人の敗北に共通するのは、選挙直前の失業率の高さである。ブッシュ氏までの3人は、失業率が7%台半ばの高水準で高止まりしていた。トランプ氏は新型コロナウイルス禍に見舞われ、ほぼ完全雇用の低失業率から一気に14%台まで上昇した。

 大統領選には足元の失業率やインフレ率などの数字が大いに影響を及ぼすが、実は大統領が誰であっても、米国の…

残り586文字(全文1386文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事