教養・歴史書評

21世紀最初の20年間の多様な日中関係を徹底検証 井上寿一

 2024年は内憂外患の年として始まったかのようである。元日の能登半島地震、翌2日の航空機事故、国内では天災、人災が連続して起きている。国外ではどうか。ウクライナ戦争だけでなく、昨年からガザ紛争が起きている。

 今年は世界的な選挙の年でもある。なかでも注目されるのは、アメリカの大統領選挙にちがいない。

 アメリカの大統領選挙の結果次第では、先進民主主義国による国際秩序の国内基盤が危うくなる。そうなれば権威主義国家の挑戦が顕在化するかもしれない。なかでも中国の動向が気になるところである。「台湾有事」の可能性は高まるのか。危機感を煽(あお)る論調が勢いを増しているかのようである。

「台湾有事」のリスクや海洋進出などに関連する中国の軍事大国化にどう対応すべきかは、軍事問題に限定することなく、日中関係の全体像のなかで慎重に考えなくてはならない。そのための重要な手がかりとなるのが高原明生、園田茂人、丸山知雄、川島真編『日中関係 2001-2022』(東京大学出版会、3850円)である。

 本書は21世紀の最初の20年間の日中関係の全体像を描く。歴史認識問題や安全保障の問題はもとより、経済・産業の分野から民間交流に至るまで、そのテーマは多岐にわたる。そこには日本とは異質な隣国でありながら、日本とは切っても切り離せない関係の中国との間に張り巡らされている多様なネットワークによって、不安定ながらも今日に至…

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週刊エコノミスト

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