教養・歴史書評

反自民はなぜ弱いのか 約30年の参与観察の記録 井上寿一

 内閣支持率が最低を更新して14%になった(毎日新聞の2月の世論調査)。「政治とカネ」の問題に起因していることは明らかだろう。このままでは総理=自由民主党総裁が交代するかもしれない。しかし政権交代には至りそうにない。各野党の支持率の低位安定と野党間連携の乱れがあるからである。

 他方で約10年前には民主党政権が成立している。さらにさかのぼれば、1993年に非自民連立政権の成立によって、55年体制は崩壊したはずである。それなのになぜ今、政権交代を展望することができないのか。山口二郎『民主主義へのオデッセイ 私の同時代政治史』(岩波書店、3410円)が考える重要な手がかりを与えてくれる。

 反自民の政党のブレーンとして知られる著者の本書は、自身の日記を引用しながら、この約30年間の政治に対する参与観察の記録である。

 全体をとおして、自民党への対抗よりも反自民の政党内の抗争とその調整をめぐって悪戦苦闘する著者の姿が印象に残る。

 なぜ反自民の政党は政権に就けなかったのか。あるいは政権の座に就きながら短命に終わったのはなぜか。著者は「護憲派」を指弾して日記に記す。「護憲派の幼稚な正論追求こそ、現実の政治の変革の流れを押しとどめる」。それにもかかわらず、非自民の連立政権や民主党政権が成立したのは、「保守が割れたことによって起きた」からだった。

 以上のとおりだとすれば、政権交代が起きるには、野党の側…

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